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TBS NEWS

2020年1月16日

【WEB特集】今年度かぎり“見敵必撮”偵察航空隊に密着(6)偵察情報処理隊長に聞く

[ 報道局編集部 水口康成 ]

 飛行隊が持ち帰った情報(フィルム)を処理・分析するのは偵察情報処理隊だ。分析までには多くの手順がある。

アナログの写真をモザイク・デジタル画像に接合

 上記が一連の流れを表したもので、取り出されたフィルムは隊員が走って現像室に届けていた。現像機にはライトボックスが取り付けられていて、現像済みのフィルムがはき出されると、そのままライトボックスで現像処理の確認をしていた。

 そこから更に建物の中を走って、判読する。私達が取材したときはモノクロ/カラーの両方が持ち込まれる訓練だったが、フィルムはリールに巻き取られたままだった。そこで一枚一枚のパノラマ写真として切り出すが、ここからが作業の進捗を決める難しい作業が待っている。

 訓練では飛行隊が一直線に飛んで直下のパノラマ写真を連写したフィルムを使うが、撮りこぼしがないように考えられているのか、フィルムには位置的な重なりがある。ここで重なりが多い部分をそのまま使うと、処理作業がその分増えてしまうため、一枚の写真を作るのに必要なフィルムだけを抽出する。作業には班長と呼ばれる隊員が立ち会い、あちこちから「班長!」という声があがる。それに班長が指示を出すと「はい!」と歯切れの良い大きな声が響く。ここまでがアナログのみを扱う部分で、ここからスキャナーに掛けてデジタル化する。アナログ・デジタル変換だ。デジタル変換されたフィルムは、パソコンに取り込まれ、そこで画像の色調整をした上で一枚一枚をうまく重ねて一つの画像として保存、それをプリントアウト(出力)する。そうして出てきたのが先に紹介した2019年の台風19号の被災地上空から撮影したものだ。

 この台の上で決壊部分など、様々な分析をしながらマークしていく。

 長野市周辺を撮影した写真は34枚のパノラマ映像を接合していて、要求に応じてサイズの変更を可能としている。このほか上田市周辺をさつえいしたものについては、1列50枚で2列100枚の写真を接合して作成したそうだ。情報処理隊は他の隊と比べるとなんとも若々しい。老眼では務まらないからか、スマホ眼もむつかしいのか、目をいかすのに若さが必要なのか、若者が多い理由を聞いてみたところ「人事異動でこうなりました」


情報処理隊長・大門博康2等空佐に聞く

 この処理にはフィルムが降ろされてから、一つ一つの作業を終わらせながら流れるのではなく、少しずつ切り出しながら同じ作業を繰り返すそうだ。時間を短縮するための作業手順とのことだ。偵察・情報収集の最後の部分を担当するだけに、緊張もあるだろう。偵察情報処理隊長の大門博康2等空佐に話を聞くと、答えは自信にあふれていた。

 「20人ぐらいで3時間半ぐらいでだいたいのオーダーに答えられるかと。機材の限界値にかなり近い。これから先は機材を更新しないと無理仮名というタイムは出せていると思います。」これ以上できないところまでスピード感を持って臨んでいるそうだ。とはいえ、あつかっているのはフィルム。そこに難しさはないのだろうか。


だから3時間半かかる

 「先のことは答える立場にはないのですが、デジタルデジタルだったらそんなに難しさはないんです。アナログデジタルだから難しい。3時間半かかる理由」また、作業については「最終ゴールが何かを把握していることが大事。ゴールに対する意識の統一こそが一番重要」と強調した。

 これは情報処理隊だけではなく、整備隊から第501飛行隊そして情報処理隊へと続く任務の流れ全体も含めての事だろう。そういう意味では隊同士の協力関係、また緊張関係が透けて見える。そして大門隊長は自信のほどをこう表現した。


「絵」最大限活かしてみせる

 「持ってきてくれれば絵を最大限活かして見せます」今回の取材では様々な航空写真を見ることが出来、また撮影することも出来た。これまでの実績がそう語らせているのだろう。災害派遣での実績が積み上げられている一方、偵察航空隊は廃止に近づいている。今後の偵察情報処理について期待する点を聞いてみたが、やはりフィルムは捨てがたいようだ。


そこは話せませんね

 「それは簡単です。撮る瞬間がデジタルになることです。間違いないです。判読も処理も楽ですし、何から始まるかというと色調整と画像をくっつけるところから始まりますので、判読でもとても楽です。それが大きくなりますので楽です。出来て当たり前なのでそこから先が求められる」つまり撮影から画像処理までは今以上に簡単になるから、その画像の分析がどこまで出来るかが勝負だと言うのだ。その一方、フィルムをこう評価した。

 「同じ距離で撮るのならフィルムの方が良いです。アナログだからこそわかることもあった…そこは話せませんね。」話したいけど話せない、苦笑いする大門隊長の話しぶりは滑舌がよく、とても歯切れが良い。だが、突然話し方に間が出来はじめた。


アンカーとして

 偵察航空隊の「終幕」について心境を聞いたときのことだった。大門隊長は「アンカーとして最後まで努めたい。航空自衛隊ではここだけですから」名残惜しい、その気持ちを「正直に言います」そう切り出して話し始めた。「寂しさはありますよね。それだけではないですよね。…その感情が強いです」

 そのあと、気を取り直したように、ホワイトボードに分析方法の例を書き込んで説明してくれた。「ここに飛行機が写っていたとしますね。そしてここに車があった。ホースも…」あの滑舌の良い話しっぷりに勢いが加わって、ホワイトボードに書かれた絵も、消しては描き、描いては描き加え、また消して…災害支援だけではない分析の実際を語り尽くせなかった。その場で語り尽くせるはずもない。だが、大門隊長にしてみれば、偵察航空隊が廃止されても、他の方法で偵察・情報収集することになるのだから、分析方法は何かの方法で継承していく必要があると語りたかったのではなかったか。隊はまもなく「終幕」を迎える。(続く)

水口康成

水口康成(報道局編集部)

外信部、NEWS23、サンデーモーニングなど担当。
元従軍記者で、著書は「旧ユーゴ内戦の記録'91-'96」や「ボスニア戦記」など、このほか通信社や新聞社などに寄稿。
趣味:テラリウム
好きな食べ物:カイマックと蜂蜜を塗ったパン