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TBS NEWS

2020年1月13日

今週の注目「かんぽ不正で新体制、いきなり試練」

[ TBS報道局編集主幹 播摩卓士 ]

 かんぽ生命保険の不適切販売問題での経営陣辞任を受けて、日本郵政の増田新社長ら3トップが9日、そろって記者会見を行いました。この中で、日本郵政の増田社長は「創立以来の最大の危機だ」とした上で、「一刻も早く全容を解明し、顧客の不利益を解消する」と述べて、調査体制の拡充の方針を表明しました。まずは『全容解明』、そして『信頼回復』、その先に『新たな成長』と、豊富な行政経験を持つ増田さんらしく手堅く記者会見をこなしました。その通りです、その順番に異存はありません。

 ただ、この第一段階の調査、すなわち『全容解明』が一番大変で、これが本当にできるのか、わからないところに、この問題の深刻さがあるのです。

 全国隅々まである郵便局で局員が生命保険を販売するという巨大組織、過去5年だけでも3000万件の契約があります。顧客、とくに不適切販売を受けた方は圧倒的にお年寄りです。問題がこれだけ大きくなって、郵政側も呼びかけをしているわけですから、自分に不利な販売を押し付けられたと本人や家族が感じている人はすでに申し出ているはずです。ですから『全容解明』のためには、保険を販売した側が申告しない限り、これ以上、不適切販売はなかなか見つからないということになります。

 不適切販売を行っていた郵便局員は、これまで『優績者』と呼ばれる成績優秀な郵便局員で、現場では郵便局長も褒め称えていた人達です。そうした環境の中で、手のひらを返したように「あなたの契約の中には不適切なものがあったはずです、調べてきちんと報告しなさい」なんて言えるでしょうか。或いは、言えたとしても実際に正直申告されるでしょうか。郵政グループのガバナンスの核心は、まさにこの点にあるのです。

 日本郵政グループのガバナンスをめぐっては、官と民の「イイトコどり」や、幾重にも及ぶ「親子関係」など制度としても様々な議論がありますが、郵便、貯金、簡保と3つの業務が入り組んだ巨大組織内の、現場までの距離感が最大の課題です。その意味では。再生の出発点である調査こそが、まさに本丸であるわけで、新体制は、いきなり大きな試練に向き合うことになります。

(BS-TBS「Bizスクエア」 1月12日放送)
播摩卓士

播摩卓士(TBS報道局編集主幹)

1984年入社 報道局で経済全般、日米関係、国際政治などを取材。夕方のニュース番組やNEWS23編集長、経済部長、ワシントン支局長、NEWS23キャスターなどを経て、現在、BS-TBS「Bizスクエア(日曜午後9時)」キャスター。