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TBS NEWS

2020年1月12日

【WEB特集】今年度かぎり”見敵必撮”偵察航空隊に密着(4)被災地へ

[ 報道局編集部 水口康成 ]


偵察という言葉では想像つかない災害派遣実績

 偵察・索敵というと有事の際の任務だがこれまでにも多くの被災地を早期の段階で情報収集している。自治体からの災害派遣要請を受けた上位の部隊からの要請を受けて、要求された情報を収集する。

 偵察航空隊の資料によると、主な派遣実績として平成23年3月の東日本大震災を始め、平成27年には口之永良部島の噴火、北関東東北豪雨、平成28年には4月に2度、熊本地震被災地へ、平成30年には草津白根山、西日本豪雨、口永良部島、北海道胆振東部地震、そして令和元年に相次いだ災害の中でも台風19号といった派遣実績がある

 。何度聞いても偵察という言葉とは結びつかず、災害支援への一翼を担っていたことはあまり知られていない。

自然相手に撮影条件を探る

 前出の通り、情報収集に向かう前席・後席の二人で飛行プランを練り、現地へと向かうが、偵察航空隊によると撮影については「目標地域周辺の、日の出、日の入り時間、天候(雲の高さ)などの状況によって異なります。

 要求される写真にもよりますが、やかんに置いても赤外線カメラがありますので偵察を実施する場合もあります。通常の可視画像を要求された場合は、日の出直後、日の入り前は光量(明るさ)および影などの影響により撮影は不向きのため、日の出2時間後、日の入り2時間前を目安に目標上空で撮影できるよう計画します」こうした光の関係から飛行経路なども検討されるが、そこは自然相手、予定通りに行くことばかりではないと説明する。

 「西日本豪雨の時は被災地上空の天候の回復を待ち離陸しています。また被災地上空で撮影を行ったあと福岡県の築城基地に着陸し、燃料を補給した後、百里基地に帰投し、現像、判読の処理を行ったため時間は撮影の都度変わっています」

 こうした遠距離での移動についてもRF系が2機種あることが奏功している。また、飛行プランは一度飛び立ったあと無給油での任務ばかりではないことがわかる。偵察機とはいえ元は戦闘機、乗り心地は保証されていないだけに、体力勝負のところもうかがえる。

 さらに具体例を紹介してくれた。「(2019年の)台風19号の被災地「長野市」を撮影し時は、前日の夕方頃に撮影地域が示され、8時頃(日の出後2時間)に撮影が出来るように準備をし、7時半頃に離陸、8時頃撮影を開始、9時頃に百里基地に着陸し、情報処理隊で処理を始めました」今回の取材でこの時の航空写真を偵察航空隊が公開、テレビメディアでは初めての撮影となる。

 横76センチ×縦280センチの巨大な航空写真として出力されている。隊の説明では「要求に従いサイズの変更は可能です。34枚のパノラマ映像を接合しました」

 私達のテレビカメラの前に現れた初公開の写真、要求された写真は上位の部隊へと渡されたあとは隊としてはどう扱われているかは詳細を明らかにしていないが、「どのように自治体にどけられたかは、我々ではわかりません。被災地で活躍する陸上自衛隊の部隊には届けられたことは確認しています」

 この航空写真を元に被災状況や支援箇所などを判別し、災害支援に活かされている。言い換えれば、災害発生後の早期の段階での情報は時間との闘いを少しでも遅らせる大きな力となり得る。実際に水没してしまった新幹線や決壊箇所、家屋が浸水している地域がどこまで広がっているか、私達の目にもはっきりわかるものだった。

 こうした撮影に偵察での航空術が活かされているのだろうか。偵察では相手のレーダーに捕捉されないように超低空で高速飛行しながら、一度のチャンスを逃さずに撮影する「見敵必撮」となる。撮り逃したから「もう一回撮影のために引き返す」ことは考えられない。

 また、偵察では目標近くになったところで急上昇したり撮影後に一気に急旋回して離脱する、など高度かつ人体に負荷のかかる飛行となる。岡田隊長に偵察と被災地での情報収集は同一線上にあるのか聞いてみた。

全くの同一線上にはない

 「全くの同一線上ではないのですが、もともと我々の存在意義というのは有事の際にそういった情報を撮るためにいろんな、特に問題が無いのであれば真上から撮ったりする装置もありますが超望遠で出来るだけ離れたところから、それを撮ってくるとか、そういった装置もあります。・・・(中略)真上から被災地全体を俯瞰して撮ることが出来るというのを航空自衛隊では活用して災害派遣に活かしているという状況です」

 被災地では、当然、「相手」はいるはずもなく、機体を隠す必要は無いので、持ち合わせているカメラ・センサーを活用できる専門の部隊が偵察航空隊ということだ。その技術の維持・向上をめざす訓練が日々行われているが、そんなある日、あの災害が起きた。そのとき偵察航空隊は・・・前席・坂本幸裕3等空佐、後席・岩山幸樹1等空尉が緊迫の瞬間を、日々を語ってくれた。(続く)

水口康成

水口康成(報道局編集部)

外信部、NEWS23、サンデーモーニングなど担当。
元従軍記者で、著書は「旧ユーゴ内戦の記録'91-'96」や「ボスニア戦記」など、このほか通信社や新聞社などに寄稿。
趣味:テラリウム
好きな食べ物:カイマックと蜂蜜を塗ったパン