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TBS NEWS

2020年1月11日

【WEB特集】今年度かぎり”見敵必撮”偵察航空隊に密着(3)第501飛行隊長に聞く

[ 報道局編集部 水口康成 ]


RF用途廃止の直接的理由とは

 偵察航空隊で実際に偵察飛行を行うのが第501飛行隊。その飛行隊長を務める岡田智光2等空佐に話を聞いた。まず、飛行隊が運用しているRFは登場が古いだけで、機体そのものが古いわけではないが、用途廃止になる理由はなにか。ソファでカメラの前に座った岡田隊長、最初はすこしはにかんだ表情だったが、ゆっくりと話し始めた。

 「RF偵察機、最初に買った偵察機ですが、これ昭和50年に運用を開始しましたが、大きな改造せずに今に至っているんですけれども、直接の理由はそれが維持できなくなったと言うことです。部品の枯渇、それから運用するためには経費の高騰等々ですねそう言ったのが直接的な理由です。航空自衛隊として機種を変えようという動きも今までにはあったんですが、様々な理由で事業化できずに今に至ってしまったというのが理由です」

 部品さえあればいつでも現役のまま仕上げられるが、それが難しくなったということだった。登場が古くても整備が出来れば現役で通せるのだがそれが出来なくなったのだ。


機種を変えて運用する動きもあったが・・・

 部品ですら、各国の防衛マーケットから姿を消すことに等しい。また、機種を変えようという動きについて耳にしたのは「F-15」への変更という話も一つの案として出ていたそうだ。


F-35を念頭に

 しかし、機種変更が実現していないことで、今後についてはどのような見方があるのか。岡田隊長は「先のことを話す立場にはありません」と前置きをして、こう話した。

 「今の飛行機はすべてマルチロールと言いまして、いろんな機能を機体に備えているというところもありまして、F-35,今導入が進んでおりますがそういうなのに任務を引き継ぐようなのを念頭に検討されているという話も聞きます」

 運用機体の世代交代で最新鋭のF-35、さらに偵察用の無人機グローバルホークなどが、偵察航空隊のような偵察専門の部隊ではなく、F-35を運用する部隊などが個別に偵察・情報収集に当たるとみられている。しかし岡田隊長、偵察航空隊の特徴を力説する。


災害時早期の段階で低空を飛行して短時間に広範囲を撮影

 情報収集の方法は今となっては多岐にわたる。様々な情報収集方法がある事も、事業化できなかったところに関係があるのかもしれない。俯瞰的な情報収集で言えば衛星からの撮影は代表格だ。偵察衛星、情報収集衛星、気象衛星・・・様々な物がある。だが、天候が悪い、もしくは晴れているが雲が多いような場合、そこは雲が写ってしまって、その下を撮すのは困難だ。

 だが、偵察航空隊にしてみれば「戦闘機のようなジェット機にそういう能力があるところに一つのメリットがありまして遠く離れたところでも速やかに移動して、かつ上空高いところから俯瞰的にそういう地域を撮影することが可能と・・・ある程度雲が無くなって災害がわかっているんだけれども全容がわからない。では雲の下を飛ぶと、そう言ったような活動をしました」

 RFには様々なカメラが積まれている。場所により、高度により、目標により、様々な条件を考慮して撮影を試みる。さらにその日の天候や現場で撮影予定を変更することもある。運用に当たっては衛星よりも小回りが利き許容範囲もある。衛星は目標位置まで移動させるのに時間がかかるとも言われる。

 岡田隊長は撮影する高度によって一枚のフィルムに映り込む面積がかわるので、撮影対象地域を一回、もしくは複数回飛行することを考えるという。

 当然ながら撮影経路が増えれば燃料やフィルムの残量も考えなければならない。そのフィルムについても「フィルムにはフィルムの良さがある」と繰り返す岡田隊長。その一方でこうも語った。

 「アナログはアナログで良いところがあるんですが、迅速性、いかに早く、より詳細にっていうのはITの時代でも求められると思うんですけれど、同じ情報であれば早いほうが良いよねってことがありますので、社会インフラがすでにデジタルになってきている以上ですね、時代の流れと言いますかデジタル化の波は押し寄せていると言いますか逆らえないという印象を持っています」

 今となってはライブ映像が主流。分析はさておき速報性を優先させたり、データでのやりとりの親和性の高さを考えると機体と様々な連絡網とのリンクが更に進み、部隊自体で、部隊間で、様々な運用が新しい時代・次元・局面に入っていくことが予想される。「偵察」・「情報収集」も、そのひとつとなる。

偵察航空隊廃止が近づく・・・

 淡々と話す岡田隊長、時折談笑になったり、力説したり、様々な表情を見せたが、「心境」を聞いたときに、真顔になった。

 「私の心境はシンプルです。任務が与えられている以上はしっかりその任務を果たせるまで頑張る、そこから先のことはそれはそれとして、偵察航空隊がなくなることはですね、組織全体を見渡して必要のあるところに人的な、もしくはお金などを注いでいかないといけないので、スクラップ・アンド・ビルドと我々は呼んでいますが、限りある資源、人材、お金、機材等々をやるためには今ある姿がずーっと永続するということで正解かどうかわかりませんが、そうでなくても良いのかなと思っております。・・・航空自衛隊いろいろな飛行隊が出来ては消え出来ては消えしていますので、それと同じような運命になるのかなあ、という風に思っています」


第501飛行隊と「キツツキ」は・・・

 「(2020年)3月以降もう無くなると思います。いつの日かわかりませんが、もし同様な偵察機の様な部隊が発足したときに、ひょっとしたらまた501飛行隊という名前が出てくるかもしれませんし、そのときの隊員がまたキツツキを付けたいなと思ってくれればうれしく思いますが、現在のところ無くなった以降のことについては、これはそのまま消えて歴史の中に埋もれていくと言うことなんだ、と思います」

 少しうつむき加減になった岡田隊長だが、そうした事も見据えている様子だった。そして・・・およそ60年の歴史の中「ずーっと存在し続けているわけだから節目に当たるというのではなくて、ずーっとやってきた任務をここで役目を終えて、また違う形になっていくと思っています」そう話す岡田隊長の表情もいつの間にか和らいだ。

隊長の話を聞いて考えてみた

 岡田隊長によると、部品の調達が難しいためRFの用途廃止が決まった事はわかった。デジタルの波もある事は確かだ。だが、それは写真だけの問題ではないと推察する。一方、偵察航空隊がなくなることについては「事業化されないまま現在に至った」という言葉が多くを物語っている。「意味深」である。

 F-15に機種変更するという仮定で話をするが、それが変更されなくなったときに、RFは部品不足の中、任務、訓練を続けなければならない。それは、機体各部に定められた交換時期、さらには「飛行時間」との戦いが始まったことを意味するのではないか。

 百里基地には偵察航空隊の他にもF-4戦闘機を運用する302飛行隊301飛行隊がある。302飛行隊はすでに三沢基地に移動し301飛行隊も今年三沢基地に移動するそうだ。そしてF-35の部隊に再編されるとアナウンスがあった。ということは、百里基地にしてみれば、F-35に機種変更されるまでF-4系を維持しなければならない事になる。しかし、F-35は納期が延期されるなど導入には「困難さ」もある。それが部隊運営に影響したに違いない。最後の日に向けて維持していくために、隊本部も運用計画に頭を痛めたのではなかろうか。

 「任務を果たせるまで頑張る」岡田隊長の言葉は現場の苦労を最後まで共有する、そんな声にも聞こえた。(続く)

水口康成

水口康成(報道局編集部)

外信部、NEWS23、サンデーモーニングなど担当。
元従軍記者で、著書は「旧ユーゴ内戦の記録'91-'96」や「ボスニア戦記」など、このほか通信社や新聞社などに寄稿。
趣味:テラリウム
好きな食べ物:カイマックと蜂蜜を塗ったパン