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TBS NEWS

2019年12月23日

今週の注目「スウェーデンがマイナス金利脱却」

[ TBS報道局編集主幹 播摩卓士 ]

 北欧スウェーデン中央銀行は、19日、政策金利を今のマイナス0.25%から、来年1月8日にゼロに引き上げることを決定しました。スウェーデンは2015年からマイナス金利を採用しておりマイナスからの脱却は5年ぶり、日本やヨーロッパなど世界の中央銀行がマイナス金利を採用する中で初めての脱却となります。

 とは言っても、目標を達成したから脱却、となったわけではありません。世界経済の減速を受けてスウェーデン景気の先行きにはむしろ不透明感が漂う上、最大の焦点だった物価も1.7%上昇に留まり、目標の2%には達していません。それでも中央銀行がマイナスからゼロへの利上げを決めたのは、副作用が無視できないほど大きくなっているからです。

 マイナス金利の影響で住宅価格は上昇し、家計や企業の債務がどんどん膨らみ、金融システムを脅かす可能性まで出てきたからです。ひとたび金融システムが脅かされれば、年金が傷つくというように幅広いリスクが懸念されるわけです。また、マイナス金利はいわゆるゾンビ企業を延命させ、結果として生産性の向上を遅らせるという面もあります。スウェーデン中央銀行の総裁は「マイナス金利は長く続ければ当初の目的とは全く違う影響を経済に及ぼす」と明言しました。

 スウェーデン中央銀行総裁の指摘は、日本経済にもリスクとしては同じことが当てはまります。日本が異なるのは、マイナス金利になっても、家計や企業の債務はさして増えていないことです。企業は金利が下がったほど顕著には借り入れを増やさず、むしろせっせと内部留保をため込み、家計も金利ゼロでも将来不安から貯金に励む堅実ぶりです。日本で債務が増えているのは、国です。

 中央銀行である日銀は、GDPとほぼ同額の500兆円までじゃんじゃん国債を買い入れ、金利を極端に低い水準に抑えています。政府は、そうした借入金利の低下をいいことに、財政規律を緩ませ、経済対策や社会福祉の充実を名目にますます歳出を膨らませ、2年連続の100兆円予算を組んでいます。消費増税までしながら、来年度予算では、新規国債発行額はほとんど減額できていません。減額であれ増額であれ、新規国債を発行するというのは、国の債務は増え続けているということです。

 企業や家計の一時的な債務の増加と、国=政府の債務の膨張では、長い目で見てどちらのリスクの方が大きいのか、スウェーデン中央銀行の総裁に聞かなくても答えは明らかでしょう。

(BS-TBS「Bizスクエア」 12月22日放送)
播摩卓士

播摩卓士(TBS報道局編集主幹)

1984年入社 報道局で経済全般、日米関係、国際政治などを取材。夕方のニュース番組やNEWS23編集長、経済部長、ワシントン支局長、NEWS23キャスターなどを経て、現在、BS-TBS「Bizスクエア(日曜午後9時)」キャスター。