NEWSの深層

TBS NEWS

2019年12月14日

中曽根康弘元首相のこと(6) ~「時事放談」の思い出

[ TBS政治担当解説委員 石塚博久 ]

 そして、その後中曽根氏は、読売新聞グループ本社代表取締役主筆の渡辺恒雄氏と共に番組出てもらうことになったっけ。

 何回も政局の節目節目でお茶の間に考えを語っていたのだが、印象に残るのが福田内閣で、自民党と民主党の小沢代表との間で「大連立構想」が持ち上がっている最中の回だ。中曽根内閣の藤波孝生元官房長官が亡くなった直後で、その思いを語るところからこの日の収録は始まった。

 「いや、この間、弔問に行きました。生涯を通じてあれぐらい真面目で一生懸命やった人はいないですけど、いろんな状況に恵まれないで、最後はわりあい寂しいお亡くなりになったと。涙が出ましたね。私は帰り、汽車の中でね、私を助けてくれた、後藤田さんも、瀬島龍三さんも、藤波さんも逝ったと、俺はどうするんじゃと、そこで俳句をね、彼(藤波孝生)は俳句の名人でしたからね。『木枯らしや/一本の杉/たじろがず』と『木枯らしが吹いても峠の一本の杉はたじろがないで立っていくんだ』と自分を激励するような、藤波さんに対しての手向けの俳句を作りましたね」

 一方の、渡辺氏は「野球談議だった」。

 司会の御厨貴氏が「渡邉さん、巨人は優勝したのに日本シリーズに出られなかった。こういう状態ですけど、どういうご感想でしょう」と水を向けると、「最大の敗因はですね。14日、間が空いちゃったんですよね。それで、その間、落合君のドラゴンズは2、3位の戦いを徹底的にやり、クライマックスシリーズに繋いでいったわけですよね。コッチは14日間、紅白試合を4回やったと言うけど、本気の、なんと言うか、練習をしてないから勝負勘が無くなっちゃってて、打つ方、投げる方もですね。14日経って気が抜けちゃった状態だったんじゃないですか。だから、ああいうやり方は本当に良くないですよ。システムが」

 そして、御厨氏が「メジャーリーグでは岡島が優勝の立役者になりましたけれども、『もし巨人にいたら』と考えになったことはありますか」とメジャーリーグの話題に変えて尋ねると「アメリカの野球と日本の野球はかなり違うんじゃないですかね。日本の方がかなり技術的にも繊細で、メジャーは大味でね。ぶっ飛ばす、当たれば全部ホームランになっちゃうようなね。そうとう大味な荒っぽい野球じゃないかなと。僕は必ずしもね。岡島君だけじゃないですよ。松坂君にしても、日本野球のレベルはかなり高い。メジャー信仰がありますがね。必ずしもそうではないんで。日本の球団で活躍できなかった人がメジャーに行くと物凄い力を出したりする。メジャーからきた、巨人の場合ですよ。殆ど役に立たなかったですよね。だから、メジャーから連れてきたからといって、元メジャーだからって日本の野球に通用しないですよ」と語っていたっけ。

 そもそも、「時事放談」のセットは「別荘に客を招きそこで縦横無尽に政治を語り合う」と言うものだった。そのもとには、中曽根氏が総理大臣当時にレーガン大統領を招いた「日の出山荘」のイメージがあった。そして、ゲストの後ろの障子の間の窓ガラス越しに見えるようにあつらえた立派な山は、実は中曽根氏の地元の赤城山だったのだ。そこで、盟友の中曽根、渡辺両氏は、まさに別荘で語り合うように縦横無尽に自らの政治への重いを語るのだった。

石塚博久

石塚博久(TBS政治担当解説委員)

1986年、日本経済新聞社入社。大阪本社証券部、名古屋支社(愛知県警、名古屋市役所担当)を経て、90年から東京本社政治部。官邸クラブ(海部政権)、野党クラブ(社会党土井委員長、田辺委員長)、平河クラブ(自民党竹下派担当、92年竹下派分裂など)等を担当。
1996年TBS入社。政治部で新進党クラブ、平河クラブ(自民党橋本派担当)、外務省(田中真紀子外務大臣)等を担当。その後「筑紫哲也NEWS23」ディレクター、デスクを経て、「時事放談」を制作プロデューサーとして立ち上げ。現在、TBS報道局政治担当解説委員。
著作:「官僚」(共著)新聞協会賞受賞