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TBS NEWS

2019年12月12日

中曽根康弘元首相のこと(4) ~「時事放談」の思い出

[ TBS政治担当解説委員 石塚博久 ]

 中曽根氏と土井たか子氏の番組「時事放談への出演」は和気あいあいと始まったのだが、イラク戦争、そして憲法改正に話題が移ると、打って変わって二人は文字通り火花をちらした。

 土井氏はイラク戦争について「戦争という手段によって紛争っていうことが解決できるかどうか。人類の長い間の歴史の中で、先制攻撃はしてはならないと、国際社会の言わば慣習法でもそうなっておりますし、今の国連憲章を見ても先制攻撃は否定している。そういうことから考えたらここまで来るまでには戦争で物事を解決しようとしても解決なりませんよという今までの大変にきつい、そしてそれに対しては厳しい経験を今までに持ってきたということなんですね」と語気を強めた。

 これに中曽根氏は「それは国際連合の憲章にも書いてあるし、世界中の人が戦争で解決できるとは思っていない。それは正しいこと。けれども色々具体的なケースを見ると、戦争によらなければ正義が解決できないと、正しいことが表へ出ないと、そういうような場合には、そういう大義名分がある場合にはこれはやむを得ずやっていいと、これは国連憲章でも認めている」と返すのだ。

 もう土井氏は止まらない「これは必ず戦争という問題に対しては言い訳めいて大義とか、これに対しては利があるとか言われ始めるんです。正しい戦争とおっしゃるようなことを聞いたら、私はとんでもないと思う。いかなる理由をつけようが、いかなる名称をそれに振ろうが戦争ぐらい悲惨なものはありません。再び戦争をいったんやってしまったら取り返しがつかないということを私たちは痛いほど経験で知っております。特に第一次世界大戦、第二次世界大戦、ベトナム戦争そして今回のイラク、重ねるたびに戦闘要員よりも罪なき市民のほうに被害を受ける。犠牲になる人たちが多いわけです。これは最近のイラクの現状に対してそういう場面というのがテレビの画面に出ませんから。ただミサイルが撃たれたとか、それからトラックでいよいよ攻撃開始が今ですよとか、そういう場面がテレビに出てくるわけでしょ。あの弾の下がどうなっているか、あのミサイルの向かう下がどうなるか、考えただけでもこれはもういたたまらない気になりますね。だからそういうことを考えていくと、どういう理由があれ、戦争ということに対して、理由があるからこのお戦争は有用だとか、またこれに対しては大義があるから紛争解決の手段として武力を行使しても差し支えないとかということではないということを9条を見ればはっきりと規定されていますっ」と熱く語った。

 これに、中曽根氏は、さらに真っ向から反論し、白熱の論争をお茶の間に届けることになったのだっけ。

石塚博久

石塚博久(TBS政治担当解説委員)

1986年、日本経済新聞社入社。大阪本社証券部、名古屋支社(愛知県警、名古屋市役所担当)を経て、90年から東京本社政治部。官邸クラブ(海部政権)、野党クラブ(社会党土井委員長、田辺委員長)、平河クラブ(自民党竹下派担当、92年竹下派分裂など)等を担当。
1996年TBS入社。政治部で新進党クラブ、平河クラブ(自民党橋本派担当)、外務省(田中真紀子外務大臣)等を担当。その後「筑紫哲也NEWS23」ディレクター、デスクを経て、「時事放談」を制作プロデューサーとして立ち上げ。現在、TBS報道局政治担当解説委員。
著作:「官僚」(共著)新聞協会賞受賞