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TBS NEWS

2019年12月11日

中曽根康弘元首相のこと(3) ~「時事放談」の思い出

[ TBS政治担当解説委員 石塚博久 ]

 中曽根元総理大臣は、「時事放談」での土井たか子元社会委員長との出演も快諾した。2004年の4月末に、砂防会館での打ち合わせで、恐る恐る話を持ち出すと、「おう土井さんと憲法かい」と、興味深そうに笑顔で快諾してくれた。「でも、土井さんの方は大丈夫かい」というので、了解をとってある旨伝えると、いたずらっぽくうれしそうな顔をしたのを覚えている。

 番組では、司会の元毎日新聞論説委員の岩見隆夫氏が「中曽根さんが総理大臣をやっておられるころに、土井さんは社会党の副委員長、あるいは委員長を務められまして、言ってみれば政敵同士のご関係だった。ご本人を前にしておっしゃりづらいかもしれませんが、中曽根さん、土井さんという政治家はどういう風に見ておられました」と水を向けた。すると、意外なことに、中曽根氏は「いや、非常に生一本な、理念を重んずる、そして真一文字に進んでいく、立派な社会党の党首だと、そういう風に敬意を表していましたね。その後、委員長になりあるいは衆議院議長までもおなりになって、女性としては一番現代において立派な人生を送りつつある方ではないかとそう思いますね」とまじめな顔で言い切った。

 これに、土井氏も「私はそれまでは、テレビを通じ、新聞を通じてしか存じ上げるということがなかったわけで。随分私たちの考え方が違っている、これは総理大臣ですから、従って、どのようなですね、日ごろ、そういう結論を出されるまでの、暮らしの中での苦悩っていうのを克服してがんばっておられるのかなって思うことがございました。そして党の委員長になってすぐさま質問する機会がございましてね、本会議で、確かあの時は、靖国神社に参拝された後でして、その翌年はいらっしゃらなかったんですけどね。その靖国神社参拝を質問で取り上げましたら、その答えが、民主主義にとっては大事なことは反省するという力量があることだと。その余裕がなければ民主主義は発展しないと。日本にも民主主義政治の中に発展する可能性を持っているという風に思われることは外交のあり方としては非常に大事な要諦であるということをご答弁の中でおっしゃったんですよ。反省。本当に。それで私は、非常にこの総理大臣には哲学があるなという思いで改めて、私はそれまでの認識を変えたのでございます」とこちらも真顔で心情を語った。中曽根氏が1985年8月15日に総理大臣として靖国神社を参拝し、中国の猛反発を受けて、その後、取りやめた時のことだった。

 あのころは、与野党の間でも政治家同士お互いを尊敬する空気があったのを思い出した。小選挙区の今とは大きな違いだ。

石塚博久

石塚博久(TBS政治担当解説委員)

1986年、日本経済新聞社入社。大阪本社証券部、名古屋支社(愛知県警、名古屋市役所担当)を経て、90年から東京本社政治部。官邸クラブ(海部政権)、野党クラブ(社会党土井委員長、田辺委員長)、平河クラブ(自民党竹下派担当、92年竹下派分裂など)等を担当。
1996年TBS入社。政治部で新進党クラブ、平河クラブ(自民党橋本派担当)、外務省(田中真紀子外務大臣)等を担当。その後「筑紫哲也NEWS23」ディレクター、デスクを経て、「時事放談」を制作プロデューサーとして立ち上げ。現在、TBS報道局政治担当解説委員。
著作:「官僚」(共著)新聞協会賞受賞