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TBS NEWS

2019年12月9日

今週の注目「バイデン候補の失言?!」

[ TBS報道局編集主幹 播摩卓士 ]

 アメリカ大統領選挙の民主党の候補者選びでトップを走るバイデン前副大統領が最初の予備選挙が行われるアイオワ州を遊説中に有権者に暴言を放ち、波紋が広がっています。小さな集会で名前を名乗らなかった83歳の農家の男性が、バイデン氏が息子をウクライナのガス企業に送り込んだのではないのかと質問したところ、「あなたはとんでもない嘘つきだ。そんな話は誰もしていない」などと逆ギレしたのです。また、この男性が「バイデン氏は大統領になるには歳を取り過ぎている」と質問すると、「腕立て伏せでもIQテストでもやってみるか」と敵意を露にし、最後に男性が「あなたには投票しない」と述べたところ、バイデン氏は「あなたは私に投票するには歳をとり過ぎている」と言い放ちました。

 78歳の大統領候補と83歳の有権者が「お前は年を取り過ぎている!」と言い合う様子は滑稽でもありますが、このシーンはあっという間に「バイデン氏の失言?」として拡散しました。本来、民主党支持者が集まるはずの小さな集会に紛れ込んだ83歳の農夫、バイデン氏を批判するために仕込みだったのではないかという疑いさえありますが、だとしても、バイデン氏はまんまとその罠にはまったということでしょうか。候補者とここまで近い距離でやり取りできるというのが、アメリカの予備選挙の醍醐味です。

 「トランプ大統領の暴言に比べれば穏やか」、「アメリカ人なら言い返して当然」といった民主党支持者らの受け止め方もありますが、感情的になったことは間違いなく、トランプ大統領と比べて、ずっと安定感があることを売りにしてきただけに、国民の関心事である「息子とウクライナ」についてきちんと説明しなかったことは、バイデン氏の評価にはマイナスになってしまいました。全国平均では民主党候補の中でトップを走るものの、ここアイオワ州では平均支持率が4位にとどまっており(現在の1位はブティジェッジ候補)、その焦りも背景にあったのかもしれません。

 今回の暴言劇、にわかに「致命的」とまでは判断できませんが、長い大統領選挙では、こうしたひとつひとつの積み重ねが意外に効いてくるものです。最初のアイオワ、次のニューハンプシャーのいずれでも勝てなかった候補が指名される例は少なく、決め手を欠く候補がなかなか現れない民主党にとっては頭の痛い出来事となりました。

(BS-TBS「Bizスクエア」 12月8日放送)
播摩卓士

播摩卓士(TBS報道局編集主幹)

1984年入社 報道局で経済全般、日米関係、国際政治などを取材。夕方のニュース番組やNEWS23編集長、経済部長、ワシントン支局長、NEWS23キャスターなどを経て、現在、BS-TBS「Bizスクエア(日曜午後9時)」キャスター。