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TBS NEWS

2019年10月28日

今週の注目「ペンス副大統領の『より攻撃的な』演説」

[ TBS報道局編集主幹 播摩卓士 ]

 アメリカのペンス副大統領が24日、およそ1年ぶりとなる対中国政策に関する演説を行いました。この中でペンス氏は「中国の行動はより攻撃的かつ不安定になっている」と強く批判、「もはや、経済的に関与さえすれば、権威主義国家を開かれた社会に変えられるとは、考えることはできない」と断じました。また香港のデモへの連帯も表明、さらにナイキやNBA(米プロバスケットボール)を名指し、ビジネスを優先させて中国の人権問題への批判を控えるアメリカ企業の行動に警告まで発したのです。ペンス副大統領の対中批判は1年前の演説より『より攻撃的に』なった印象です。

 去年10月のペンス演説は米中新冷戦を鮮明にしたものとして世界に大きな衝撃を与えました。実は、第2弾の対中演説は今年6月に予定されていましたが、米中貿易交渉に配慮して延期された経緯があります。にもかかわらず、来月に貿易交渉で部分合意をめざしているこの時期になぜ、ペンス氏はこうした対中演説を行ったのでしょうか。

 演説の中でペンス氏自身、「来月に米中貿易問題で第一段階の合意文書に署名できることを望んでいる」と述べています。その言葉に偽りはないでしょう。ペンス氏は、アメリカも中国もここまで積み上げてきて部分合意をチャラにすることはないと読んでいるのだと思います。しかし、貿易問題で目先の合意ができても、「中国に対するアメリカの見方は何ら変わってない」ということを、この際、明確にしておきたかったのだと、私は見ています。そのことを合意前の今こそはっきり中国にも世界にも発信しておきたいというワシントンの政府・議会の主流派が、ペンス副大統領の発言の後ろにあるのです。これは、対中強硬派のペンス氏の言葉を借りたワシントン・コンセンサスと言えるでしょう。同時にトランプ大統領が、合意を急ぐあまり、ファーウェイや知的所有権問題で妥協しないように、あえてこの時期に釘を刺す狙いもあったのだと思います。

 ペンス副大統領は「中国はかつてない監視国家」「検閲を甘受するならば誤りであるばかりか非米国的だ」とも述べています。米中対立は、単なる貿易摩擦でないばかりか、技術覇権の争いに留まるものではなく、自由・公正といったまさに価値観をめぐる対立になりつつあることを、ペンス演説は明確にしています。

(BS-TBS「Bizスクエア」 10月27日放送)
播摩卓士

播摩卓士(TBS報道局編集主幹)

1984年入社 報道局で経済全般、日米関係、国際政治などを取材。夕方のニュース番組やNEWS23編集長、経済部長、ワシントン支局長、NEWS23キャスターなどを経て、現在、BS-TBS「Bizスクエア(日曜午後9時)」キャスター。