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TBS NEWS

2019年10月23日

その手は無意識のうちに…【動画編】

[ 報道局編集部 水口康成 ]

 ニジェール南部ザンデール州の病院を訪ねた。中央病院のような位置づけだろうか、敷地も広く建物も大きい。入り口の前には広場がありそこにはモスクも建てられている。 この病院の右手には新生児病棟のような病室がある。病室と言っても大きな広間の一角は出産直後に運び込まれた赤ちゃん、その一角の横には出産後6か月以降で運び込まれた赤ちゃん、そのほかにも病状によってベッドが並べられている。いずれも母親が付き添っていて、苦しそうに呼吸する我が子に寄り添っている。


 取材では、子供の写真も含め受けてくれると許可してくれた母子に話を聞いた。だが、話を聞くよりも、子供の姿から目が離せなかった。大丈夫か。この子は酸素吸入を受けていて、薄い緑色のチューブが体の横からベッド脇まで伸びている。左手には点滴用の弁がテープで固定されている。食事は無理なのだろう。

 背中を見ればまるで骨が見えるというよりは、肩甲骨が皮膚を突き破るのではないか心配したくなるほどやせている。目は開けない。意識混濁の中、母親の存在だけはわかっているのだろう。しかし、苦しい、痛い、違和感、何かを感じるのか、この子は右手で左手の点滴用の弁をつかもうとする。取り外したいのだろう。だが、弁を見ることもなくつかむ力もなく、ただ指が弁に引っかかるだけだった。それでも、見ている我々は冷や汗が吹き出る。言葉が通じないから、日本語で思わず「ちょっとちょっと」とか「取ろうとしている取ろうとしている」「手が!」と叫ぶことしかできない。見かねたユニセフのスタッフが、この子の手を取り、あやし始めた。


 手のひらを重ね動きを落ち着かせた。この子にはどんな感触が伝わっているのだろう。スタッフは指でこの子の手の甲を触れ始めた。何かが通じるのだろう、横になって落ち着いてきた。そこにいた皆が、一安心しながらも、ずらりと並ぶ母子の姿に、簡単な状況ではないと再認識した。

 病室にいた医師に話を聞いた。「貧困で母胎の栄養が足りていない。子供も何でも口に入れるから下痢をしてやせていく。水だって飲める水ばかりではない。このまま人口が増え続ければこうした患者も同じように増えると思って不思議ではない」ニジェールだからという理由だけではないが、状況を好転させる糸口は見えていない。

水口康成

水口康成(報道局編集部)

外信部、NEWS23、サンデーモーニングなど担当。
元従軍記者で、著書は「旧ユーゴ内戦の記録'91-'96」や「ボスニア戦記」など、このほか通信社や新聞社などに寄稿。
趣味:テラリウム
好きな食べ物:カイマックと蜂蜜を塗ったパン