NEWSの深層

TBS NEWS

2019年6月24日

今週の数字「75ドル」

[ TBS報道局編集主幹 播摩卓士 ]

 20日のニューヨーク株式市場のダウ平均株価は2万6753.17ドルと、去年10月3日につけたダウ平均の史上最高値2万6828.39ドまで、あと75ドルにまで迫りました。翌21日には、取引時間中に一時、この最高値を超える場面もありましたが、イラン情勢の緊迫化などもあって結局、5日ぶりの反落で取引を終え、終値ベースでの最高値更新はお預けとなりました。一方、株式市場より広い銘柄をカバーするS&P500はすでに最高値を更新しました。いずれにしても、昨年来「大きく崩れた」と言われながらも、アメリカの株価は史上最高値の水準まで戻したと言って良いでしょう。

 最大の関心事である米中貿易交渉に何の進展もない中で、アメリカの株価が戻したのは、中央銀行のFRBの姿勢の変化のおかげです。FRBは直近の政策決定会合で、これまでの『様子見』から、利下げ局面への転換を宣言し、市場はこれを好感ました。去年終盤の株価急落以降、FRBは市場に催促されるように、それまでの利上げ路線を凍結し、結局、利上げプロセス半ばで利下げへの転換を余儀なくされました。その背景には、トランプ大統領からの執拗なまでの攻撃、すなわち利下げ要求もありました。「1%利下げをすれば米中貿易戦争を戦え抜ける」とまでツイッターで呟かれては、パウエル議長もたまったものではありません。

 不思議なことはいくつもあります。アメリカのマクロ経済指標は成長率も雇用状況も依然として良好で直ちに利下げが必要な水準では決してありませんし、景気が悪くなりそうだから利下げするのに株価がどんどん上がるというのも、これまた不思議な現象です。こうした不思議な現象の背景には、景気が良くても賃金や物価が上がらなくなったという先進国経済の変化や、常態化した過剰流動性の存在といった、いずれも構造変化が深く関わっています。場当たり的な政策対応に見える背後に浮かぶ、こうした経済の構造変化をしっかりと見ることが重要になっています。

(BS-TBS「Bizスクエア」 6月23日放送)
播摩卓士

播摩卓士(TBS報道局編集主幹)

1984年入社 報道局で経済全般、日米関係、国際政治などを取材。夕方のニュース番組やNEWS23編集長、経済部長、ワシントン支局長、NEWS23キャスターなどを経て、現在、BS-TBS「Bizスクエア(日曜午後9時)」キャスター。