NEWSの深層

TBS NEWS

2019年6月10日

今週の数字「7万5000人」

[ TBS報道局編集主幹 播摩卓士 ]

 アメリカ労働省が7日発表した5月の雇用統計によりますと、景気動向を敏感に反映する非農業部門の就業者数の増加は7万5000人に留まり、前の月の22万4000人増から急減しました。7万5000人増という数字は、大寒波の影響という特殊要因があった今年2月を除くと、ここ1年半で最も低い数字です。失業率は前月と同じ3.6%で49年ぶりの低い水準が続いていて、雇用状況全体は全く悪くないのですが、貿易戦争の影響もあって、ここに来て雇用者数の増加に急ブレーキがかかっているのではという懸念が出てきました。内訳を見ても貿易戦争の影響を受けやすい製造業だけでなく、建設やヘルスケアといったサービス業でも伸びが鈍化しています。

 これを受けて金融市場では、中央銀行のFRBが早期に利下げに転じるのではないかといった見方が広がり、7日のダウ平均株価は263ドルも上げました。景気の悪化が懸念されるなら本来、株価は下げても良さそうなものですが、逆にラリーになっているのです。

 すでに4日には、FRBのパウエル議長が貿易戦争に懸念を示し、「必要なら適切に対処する」と述べたことから、株式市場ではこれを「利下げ示唆」と受け取り、「催促相場」がすでに始まっていました。先週はなんと5日連騰、1週間で1168ドルという急騰ぶりで、米中報復合戦やメキシコへの追加関税に怯えた前週までとは様変わりの展開です。

 市場では「今年の利下げは2回」「7月にも1回目の利下げ」「1回目の利下げは0.5%」などと思惑が飛び交って、もはや節操のない催促ぶりです。

 過剰流動性を背景に、目先の金融政策やニュースのヘッドラインで大きくふれる市場のありさまには違和感を感じますし、市場の声にあまりに振りまわされていては、経済の実態を見失うことにならないかと心配になってしまいます。

(BS-TBS「Bizスクエア」 6月9日放送)
播摩卓士

播摩卓士(TBS報道局編集主幹)

1984年入社 報道局で経済全般、日米関係、国際政治などを取材。夕方のニュース番組やNEWS23編集長、経済部長、ワシントン支局長、NEWS23キャスターなどを経て、現在、BS-TBS「Bizスクエア(日曜午後9時)」キャスター。