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TBS NEWS

2019年6月3日

今週の数字「5%」

[ TBS報道局編集主幹 播摩卓士 ]

 アメリカのトランプ政権は、メキシコの国境での不法移民対策が不十分だとして、6月10日からメキシコからのすべての輸入品に5%の追加関税を課すという驚きの発表を行いました。そしてメキシコが対策をとらなければ、追加関税を7月1日に10%に、8月1日15%、9月1日に20%、10月1日に25%に引き上げるとしています。

 トランプ大統領にとって、メキシコからの不法移民を防ぐための「国境の壁」の建設は最大の選挙公約でしたが、議会での野党の反対にあって進まず、「非常事態宣言」発して緊急予算をつけたものの、各地で差し止め訴訟を起こされています。次の大統領選挙に向けて何とか不法移民対策をアピールしたいというのが大統領の狙いでしょう。

 しかし、中国への追加関税とは違って、そもそも移民対策と関税は関係ありませんし、北米大陸内の関税措置をめぐっては、アメリカとカナダ・メキシコの間でNAFTAに代わる新しい貿易協定(USMCA)をアメリカの意に沿う形でまとめたばかりで、メキシコならずともどう見ても理不尽な話です。

 アメリカのメキシコからの去年の輸入額は3465億ドルと、中国に次ぐ第2位です。そのすべてに追加関税をかけるというのですから、対象規模としては、中国への合計2500億ドル分を大きく超え、食料品から日用品まで広範囲に及びます。しかも輸入額の37%にあたる1281億ドルが自動車・自動車部品です。アメリカ最大の自動車メーカーGMがアメリカ国内で販売する自動車の22%がメキシコからの輸入だそうです。

 しかも、アメリカ・メキシコ間では1台の完成車がメキシコからアメリカに輸出される前に、様々な部品が何度も国境を行き来しています。例えば、メキシコで作られたボルトがアメリカ行ってパーツとなり、それがまたメキシコに戻って今度は完成車に組み立てられ、再びアメリカで売られるというように、無税の自由貿易を前提にしたサプライチェーンが構築されていて、トヨタや日産、ホンダなど日本のメーカーもこうした制度を利用しています。国境をまたぐ度に追加関税が課せられるわけですから、たとえ税率が低くても、太平洋を渡った最後の1度だけに追加関税がかかる米中貿易よりはるかに大きな影響があるのではないでしょうか。

 米中貿易戦争の激化で世界中に景気先行き不安が広がる中、大統領の火遊びで、世界経済はさらにとんでもない爆弾を抱え込むことになりました。

(BS-TBS「Bizスクエア」 6月2日放送)
播摩卓士

播摩卓士(TBS報道局編集主幹)

1984年入社 報道局で経済全般、日米関係、国際政治などを取材。夕方のニュース番組やNEWS23編集長、経済部長、ワシントン支局長、NEWS23キャスターなどを経て、現在、BS-TBS「Bizスクエア(日曜午後9時)」キャスター。