NEWSの深層

TBS NEWS

2019年5月31日

「あの朝のこと」 ~新たな「時代」と「ポスト安倍」の誕生の裏側(6)

[ TBS政治担当解説委員 石塚博久 ]

 安倍総理は、菅官房長官に続いて記者会見場に現れ、なぜ「令和」にしたのかとの理由を「万葉集」から引用したと説明し「一般庶民も含め地位や身分に関係なく、幅広い人々の歌がおさめられ、その内容も当時の人々の暮らしや息づかいが感じられる、まさに我が国の豊かな国民文化を象徴する国書です」などと力を込めた。

 そして、「次の世代、時代をになう若者たちがそれぞれの夢や希望に向かって頑張っていける社会、『一億総活躍社会』を作り上げることができれば、日本の未来は明るい、そう確信しています」と政権のキャッチフレーズにつなげて見せたりするのでびっくりした。

 記者からは「平成改元時と異なり、今回総理が自ら談話を読み上げる判断をされた理由を」などと、少し意地悪な質問が飛んだ。

 安倍総理は「あの、今回、元号を発表するにあたり、誰が発表するという意見が随分議論があったと思いますが、議論になると思いますが、新しい元号は本日、政令というかたちで閣議決定いたしましたが、通常閣議の内容は、官房長官が公表しています。そのため、今回も新元号については平成の時と同じように官房長官が発表することといたしました」

 「その上で、平成の改元時にはですね、当時の竹下総理の談話が発表されています。当時は総理大臣が会見を行うのは極めてまれでありましたが、平成の30年を経て、総理大臣が直接発信する機会も増大しました。わたし自身、何らかの出来事があると、官邸に入る際、記者の皆さんから声がかかり、マイクを向けられることもあります。そうした時代にあって、平成の時と同様に、総理大臣談話を発表するのであれば、わたし自らが会見を開いて国民の皆様に直接申し上げるべきだとこう考えた次第です」などと長々と語った。

 この、総理大臣会見は菅官房長官が水を向けて、安倍総理がそれに「乗った」のだと後から知った。

 ただ、さっきから前に座るどっかの外国人カメラマンは、そんな様子はお構いなく、パソコンで菅長官が「令和」の額縁を掲げた写真を様々トリミングしながらどこかに送り続けていた。実際、軒並み新聞の多く(読売新聞以外)は、安倍総理のその姿ではなく菅長官の額縁を掲げた写真を一面いっぱいにのせていた。

 数日後、新聞で安倍総理主催の「桜を見る会」を伝える記事を読んでいたら、その最後に「会場では、元号発表時に墨書をかかげ『令和おじさん』の愛称が浸透した菅義偉官房長官に記念撮影を求める人が相次ぎ、注目度の高さをうかがわせた」とあった。

 行くと言っていた知人に電話をしたら、「いやあ、行列が30メートルぐらいつながっちゃっててさあ、30分待ちの状態だったんだから」と興奮気味に語った。「新たな『ポスト安倍』の誕生だな」と思ったりした。

 片山元総務大臣は「れいわにすべき5つのこと」をあげ、1位を「他者を思いやる心、共感する心を取り戻す」とした。

 「格差社会を何とか是正しなきゃいけないってことはもうかねてずっと言われてるんですけど、これ、むしろ格差は拡大する傾向にありますよね。それで、これはね、いろんなところに今、社会にひずみを生んでます。例えばですね、そのー、格差、経済的格差からですね、子供の貧困っていうのが一つあるんですね。あのー、子供たちの中で、やっぱりちゃんとした経済環境になくって、まともに教育が受けられないっていう、で、これはね、やっぱり国民国家としては由々しき問題ですよね」

 「親にある程度社会的な、その、格差とか経済的格差があっても、子供はできるだけスタート地点は平等にして、そっから自分たちの才能を伸ばしてもらおうと。それがこの、国を支えることになりますよね。ところが最初からもうね、スタートの段階で格差が付いちゃって、もう自分たちは教育もまともに受けられないって話になったら、国が分断されてしまいますよね。それから本来発揮してもらえるような、1人1人の子供たちが将来発揮してもらえるような才能とか能力とか、国や社会への貢献というものが途絶えてしまいますよね。これは大きな損失だと思います。だから早くやっぱり格差を是正して、それで、できるだけみんなが、その、1人1人の持っている能力を伸ばせるようなそういう社会にしなきゃいけないと思いますね」。

 「あの、梶山静六さんっていう政治家がいて、私、若いころ、大臣秘書官でお仕えしたんですけどね、いっつも言ってたのが、政治の目的は弱い立場の人、力の弱い人、声の小さい人のためにあるんだと。強いやつはほっといてもいいんだと、勝手に行くから。弱い立場を押してやるのが政治なんだということを言われてましたけどね。そのとおりだと私も思うんですね。ですから、政治は政治の原点に返る、1人1人はやっぱり強い人たちは、元気な人たちは、弱い人のことを思って、何とか手を引っ張ってあげるという、こういう社会にしなきゃいけないと思いますね」

石塚博久

石塚博久(TBS政治担当解説委員)

1986年、日本経済新聞社入社。大阪本社証券部、名古屋支社(愛知県警、名古屋市役所担当)を経て、90年から東京本社政治部。官邸クラブ(海部政権)、野党クラブ(社会党土井委員長、田辺委員長)、平河クラブ(自民党竹下派担当、92年竹下派分裂など)等を担当。
1996年TBS入社。政治部で新進党クラブ、平河クラブ(自民党橋本派担当)、外務省(田中真紀子外務大臣)等を担当。その後「筑紫哲也NEWS23」ディレクター、デスクを経て、「時事放談」を制作プロデューサーとして立ち上げ。現在、TBS報道局政治担当解説委員。
著作:「官僚」(共著)新聞協会賞受賞