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TBS NEWS

2019年5月22日

萩生田発言の真相とくすぶる衆参ダブル選挙の憶測【3】

[ TBS政治部記者 室井祐作 ]

■解散の大義に憲法改正!?

 では解散の大義はどうするのか。

 現在のところ政府与党内からも消費税の再々延期するような確たる話は聞こえてこない。今後米中の貿易戦争がどこまで中国経済の低迷を招くのか、予断をもって述べるべきではないが、企業はいま10月の消費税引き上げに絡む、複数税率導入やポイント制、キャッシュレスにむけた投資をはじめているわけで、リーマンショック級でない限り予定通りと、政府がいっている以上、現時点で消費税の再々延期、さらにそれを解散の大義にすることは考えにくい。

 次に外交。総理に近い自民党幹部によると「日露の北方領土交渉や北朝鮮との会談の見通しはなく、外交が今後大きく動くことは考えにくい」と述べていて、これも解散の大義にするのは難しいという見方が与党内には強い。

 そこで、今、自民党内で急に浮上してきているのが、「憲法改正」である。13日の役員会で総理が「自民党の4項目の改憲案を議論しないのはおかしいのではないか」と発言したことで、あらためて憲法改正の流れを総理自らが作ろうとしている。自民党の下村博文・憲法改正推進本部長は、派閥ごとに憲法改正についての勉強会を開くよう呼びかけた。参院選挙の公約にもいれ、憲法改正に向けた国民的気運を醸成しようとしている。

 しかし、もし憲法改正を争点にすれば、改正阻止で野党が急速にまとまる恐れがある。憲法9条など具体的な自民党の改正案を持ち出すことは、憲法に対する国民の理解が深まらない中、争点化にはリスクが大きいだろう。

 目だった解散の大義がないために、自民党幹部のひとりは「野党の内閣不信任案に乗っかるというのも手だ」と述べていて、野党側の解散要求を逆に大義にしてしまおうとする意見もでている。

 現在、野党第1党の立憲民主党は、枝野代表を委員長とする政権構想委員会を設置し、本格的な政権構想に着手している。

 恒例行事のように通常国会の最後に野党が内閣不信任案を出すことに辟易していた野党第2党の国民民主党・玉木雄一郎代表はこの動きを歓迎している。

 「通常国会の最後に内閣不信任案を出すことになると思いますね。本当に解散になって、選挙戦うっていう可能性が高いわけですから、そのときに、やはりどのような政権をつくるのか、どのような政策を提示するのかということをやっぱりきちんと用意しておかなければいけない」(国民民主党・玉木雄一郎代表 4月23日)

 しかしながら、菅官房長官が5月17日、野党の内閣不信任案が、大義になりうるという考えを示したことで野党側に動揺が走った。

 「野党に解散権を委ねるかのような発言をされた官房長官にちょっと驚いています。そこまでして、大義がないということを官房長官が明言したことでもあると思いますので、解散ができない状況ということをお認めになったんだと思います」(立憲民主党・蓮舫副代表・参院幹事長 5月20日)

 しかしこれは内閣不信任案の提出を目論む野党側への牽制という見方が強い。菅発言の翌日、自民党幹部はこぞって「一般論としてお話されたのだろう」(岸田政調会長)、「理屈の上ではなりえるが、解散の可能性は極めて低いのではないか」(甘利選対委員長)などと火消しに走った。

■大義なき解散に国民の理解は得られるのか

 衆議院の任期は2021年10月まで。消費税の増税後や、来年のオリンピック前などは解散しづらい。今回を逃すと解散するタイミングは、オリンピック後しかなくなるではないかという見方が強い。その時期に支持率がどうなっているのか見通せない。そこまで引き伸ばせば政権はレームダック化する恐れもあり、安倍総理の悲願である憲法改正も難しくなる。改憲勢力での3分の2を維持するために、「勝てるタイミング」にこだわるのかどうか。そして依然としてダブルについては衆参ダブル選挙に反対の姿勢を貫いている公明党がどのように作用するのか、今後も注視していく。

室井祐作

室井祐作(TBS政治部記者)

政治部・与党キャップ。2004年入社。映像取材部、外信部、バンコク特派員を経て政治部へ。これまで官邸クラブ、自民党クラブ、野党キャップを担当。特派員時代はアジアを中心に27か国を取材。