NEWSの深層

TBS NEWS

2019年2月26日

「怒れる岡田克也議員」の裏側

[ TBS政治担当解説委員 石塚博久 ]

 12日朝、9時に委員会が始まるのを控えて、いち早く大臣席に座った安倍総理と麻生財務大臣と茂木経済再生担当大臣は、なにやら談笑していた。そこへ、水色の光沢のあるジャケットに白いインナー姿の野田聖子予算委員長がやってきて、質問席の立憲民主党の岡田克也元民主党委員長を前に「おはようございますっ」と声を張り上げて予算委員会は始まった。拍手と「えいっ」などとの掛け声の中、質問に立ち上がった岡田氏は、冒頭から怒っていた。2日前の自民党大会で安倍総理から飛び出した「悪夢のような民主党政権」との発言だ。

 岡田氏は、怒りを押し殺すように「先般の自民党大会で、総理は、「あの悪夢のような民主党政権が誕生した」というふうに言われました」と語りだした。野党からのヤジとともに、自民党からは「その通り」などとの声も上がった。岡田氏が「もちろん民主党政権時代の反省は我々にあります」と言うと、あびせるように「反省しないとっ」と声があがった。その中、岡田氏は「しかし、政党政治において頭から相手を否定して議論が成り立つのか。私たちは政権時代に、その前の自民党の歴代政権の重荷も背負いながら、政権運営をやってきました。そのことを考えたら、あんな発言は私は出てこないはずだと思いますっ」と声を張り上げ、野党から「そーだっ」との声。そして、岡田氏は「撤回を求めますっ」と大声を出し、呼応するように「そーだっ」と野党から声が上がった。

 これに安倍総理は「あー、まさに政党間で議論する。私は別に議論を受け入れてないわけじゃなくて」と薄笑い。「先週もですね、7時間5日間ずっと議論させていただきました。みなさんはですね、皆さんは自分たちの政権の正当性であればいろんな場所で演説されたらいいんですよ」と語り、これに自民党席から「そうだっ」との声があがった。そして、「私は自民党総裁としてそう考えている、そう考えているということを述べる自由は、まさに言論の自由なんですよ。あるわけでありまして」と語り、自民党席から我が意を得たりとのように「そうだ」との声が上がったりした。そして安倍総理は「少なくてもバラ色の民主党政権でなかったことは事実なんだろうなと、こう言わざるを得ないわけでありますが。そこで」と答弁を続けようとするのだが、突然の「言論の自由」に、委員会室は「ひどいなあ」などとのヤジで騒然とした。野田聖子委員長が「お静かにねがいます」とたしなめたタイミングで安倍総理は「そこでですね、そこで、では何が、私は一番言いたかったかっていうことはですね、やっぱりあのとき、若い皆さんの就職率低いじゃないですか。岡田さんにはそういう反省全然ないんですか。我々はですね、我々は、政権を失ったときですね、まさになぜ政権を失ったかということを」と言葉を継ぎ、煽られた格好の野党席からはさらに激しいヤジが飛び、野田委員長は「皆さんお静かに願います。」と改めてたしなめることとなった。

 安倍総理はあからさまにうんざりした表情を見せ、「こういう雰囲気で果たしていいのかどうかということも含めて申し上げたいというんですがね。この、なぜ政権を失ったか、我々は深刻に反省したんです。その中において、全国でですね、ずっと車座集会を開きながら、真摯に耳を傾け、我々は、生まれ変わろう、そういう決意をしたわけでございます」と語った。そして、思いついたように「皆さん、悪夢ではなかった。それを否定しろとおっしゃるんですが、では何故ですね、民主党って名前変えたんですか。私はそれが非常に不思議だ。自民党は自民党という名前を変えようとは思わなかった。私たち自身が反省して生まれ変わらなければならないという大きな決意をしたんです。皆さんはこの民主党っていうイメージが悪いからおそらく名前変えられたんだろうと、こう推測する人たちたくさんいますよ。そういう意味では皆さんもそう思っておられるんじゃないですか」と、ヤジの巻き起こる中、2分間にわたって眉間にしわを寄せながらも、とうとうと語った。これに、岡田氏の怒るまいことか。

 岡田氏は「驚きました。もちろん私たちは政権運営について反省があるというふうに今申し上げました。しかしその前の自民党政権時代の反省はないのかということを私は申し上げているわけです。その重荷を背負って私達は運営した部分もある」と語り、「そうだっ」と声があがった。「あなたが本当に自民党政権時代の反省をしたというのであればっ、あんな言葉出てこないはずですよ。一方的に民主党政権レッテル貼りしてますけれども、あなたたちがやったことで、私達も苦しんだこともある。そういったことについて謙虚な気持ちで総理ですから発言してもらいたいと思うんです」と大声を上げ、ここでも「そうだっ」と声が上がった。そして、岡田氏は「今の発言全く了解できませんよ。取り消しなさいっ」と安倍総理を指さして声を張り上げた。

 これに安倍総理はすました表情なのだ。「取り消しなさいと言われても取り消しません。えへっ。それを明確にさせていただきたいと思います」と。そして安倍総理は「そこでですね、ですから反省がないというわけではないということは申し上げましたよね。でも皆さんに重荷を背負わしたというのはこれはわからない。皆さん政権とったんですから自分たちの政策を進めれば良いじゃないですか。重荷というのは何ですか」と委員会室を見渡し、これに「財政赤字」とどこからか、声があがった。これに安倍総理は「財政赤字、財政赤字」と思案気で、ヤジに野田委員長は「ご静粛にお願いします」とさとした。この中、安倍総理は「今何か岡田委員もですね、そういうヤジを飛ばされると迷惑だということですから静かにしていただきたいと思いますが」などと語りながら、「例えば財政赤字ということについてはですね、財政赤字ということについて言えば、もちろん我々もその財政赤字がたまってきた。しかしですね、これはそれぞれ必要があって言ったことであって、漫然と言ってきたわけではない。それぞれですね、あえて赤字を、この覚悟をしても出さなければいけない時っていうのあるんですよ。ですから例えばですね、先ほど申し上げましたように、就職氷河期等を作ってはならない。その皆さんはずっと苦労するんですよ、、、」などと、またとうとうと語りだした。たまらず、岡田氏が質問席に座ったまま「聞いていないそんなこと」と声を上げても、安倍総理は「そういうときには財政、財政政策をするわけであります。または、皆さんの、誰かそうおっしゃったからそう答えさせていただいたわけであります」と、ヤジで騒然となる中、すました表情で語った。興奮した岡田氏は「委員長、委員長、聞いてないこと答えてる」と憤然たる様子だった。

 そして、質問に立つと岡田氏は「私が聞いてないことに延々と時間使わないでもらいたい。私は、民主党政権時代の最大の苦しみ、そして申し訳なかったと思うことは原発事故ですよ。福島の原発事故。もっとうまく対応できなかったか。私達反省ありますよ。だけど同時にその前の自民党政権にも責任があるんじゃないですか。そういう意味であなたは責任を認めないんですか。はっきり答えてください」と、まじめな岡田氏らしく反省を交えながら、問いただした。これに安倍総理は「だいたい批判をするなということ自体が、それはおかしいわけであってですね。皆さんが自由民主党に対して批判をすれば、それに対して反論しますよ。批判自体をやめろとかですね。そういうことを言ったことは私は1回もないですよ」とプイと言い放ち、座った。岡田氏は「批判するなと言ってるんじゃなくて、全否定したようなレッテルばりはやめろと言ってるんですっ」と声を張り上げた。

 朝っぱらからの、言い合いはやまなかった。安倍総理は「全否定するなとおっしゃいますがね。みなさん、例えば採決のときにですね。安倍政治は許さないと。全否定してプラカードをみんなで持ってたのはどこの党のみなさんですか。名前が変わったらそれがもうなくなったということになるんですか」とうすら笑いを浮かべた。そして、「皆さんの時のマクロ政策、私は間違っていたと思いますよ、明確に。ですから私達は3本の矢という、新たな政策を打ち出したわけであります。その中で、もはやデフレではないという状況をかなり早い段階で作り出すことができた」と胸を張った。続けて「昨年の12月の1日時点でですね、大卒者の就職内定率は過去最高となっているわけであります。やっぱり若い皆さんがですね、働きたいと思う人がやっと仕事が、やっぱり仕事があるという状況をつくることが、政治の大きな責任だと思っている。申し訳ないんですが皆さんのときには残念ながらそれを果たすことができなかったのは事実ですから。この事実を受け止めないんであればですね、全く反省していないと言わざるをえないんではないですか」と声を張り上げた。

 朝から、15分にわたってのやり取りだった。その時、委員会室でやり取りを聞いていた石破元幹事長は、国会トークフロントラインのスタジオで、ため息交じりに語った。

 「自民党大会では、私まぁその場に当たり前の話、いましたけどね、会場内に微妙な雰囲気が漂ったんですね。それは自民党、自公政権に戻った直後だったら『そうだ~』って拍手がわくんだけど、6年経っているわけですよね。いやいや、民主党に比べればましでしょ、っていうのやめてくれませんか。そういうことを言うよりも、あの民主党、そのあとバラバラになっちゃったけど、それに比べりゃましでしょっていう、そういう選択を国民にお願いしちゃいけないと私は思っているんですよ。これはあの政権奪還したときに安倍さんが総裁で、私幹事長でしたけれどね、民主党よりもましだから自民党っていうのはもうやめようと、今日限りで。自民党がいいから自民党だって言ってもらえるように頑張ろうねって話をしたんですね。だからその。そういうことをおっしゃる時間をもっとほかのことに費やしていただいたらよかったのにね、っていう感じはしますけどね」。

 そして、石破氏は「総理大臣は国父だ」と語っていた、後藤田正晴元副総理を引き合いに出しながら語った。「後藤田先生がそうおっしゃったのは内閣総理大臣て、そういうもんなのだ、内務官僚としてのあるいは官房長官としての後藤田先生の見識だったと思いますよ。私も後藤田先生には随分といろんなことを教えていただいたんですけどね。だからその『言論は自由なんだ、何を言ってもいいんだろ』って言うんだけど、それはそうなんだが、私は(昭和)32年生まれなんですけど、憲法なんか習ってね、言論の自由とか、そいうことを習った、小学校でね。子供がわ~わ~いろんなこと言うじゃないですか、『そういことを言うんじゃありません』に『言論の自由だ』っていうことを言った子供がいることをなんとなく思い出しました。総理、その言葉にも態度にも国父っていうんでしょうかね、いろんな日本人のお父さんみたいな、そういう役割も求められるんだなと」

石塚博久

石塚博久(TBS政治担当解説委員)

1986年、日本経済新聞社入社。大阪本社証券部、名古屋支社(愛知県警、名古屋市役所担当)を経て、90年から東京本社政治部。官邸クラブ(海部政権)、野党クラブ(社会党土井委員長、田辺委員長)、平河クラブ(自民党竹下派担当、92年竹下派分裂など)等を担当。
1996年TBS入社。政治部で新進党クラブ、平河クラブ(自民党橋本派担当)、外務省(田中真紀子外務大臣)等を担当。その後「筑紫哲也NEWS23」ディレクター、デスクを経て、「時事放談」を制作プロデューサーとして立ち上げ。現在、TBS報道局政治担当解説委員。
著作:「官僚」(共著)新聞協会賞受賞