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TBS NEWS

2019年2月1日

怒れる「辻元清美議員」の裏側 ~「ねもとから変えろ」と…

[ TBS政治担当解説委員 石塚博久 ]

 そして、安倍総理の施政方針演説を受けて、各党の代表質問が始まるのだ。昼下がりに、立憲民主党が代議士会を開く控室にいると一番乗りは中村喜四郎氏だった。かつて梶山国対委員長のもとで旧竹下派のプリンスとして活躍した中村氏は、その後の紆余曲折を経て、それでも徹底した地元周りで当選を重ね、今や「カリスマ的存在」として立憲民主党の若手議員の「選挙の指南役」となっている。

 その、中村氏が、一番後方の角のちょうど入り口のところに座ったために、若手議員は入るとびっくりして「はじめまして、高知出身でございます」と名刺をさし出し頭を深く下げたり、「比例復活です」と名乗り出て「群馬ですか。どうかよろしく」と言われてこちらも頭を深く下げたりと騒がしいのだ。議運委員会の理事の手塚氏は、一旦、正面の執行部席に座りながら、中村氏の姿を見つけるとそそくさと寄ってきて「先日はわざわざ丁寧に…」などと話しかけ、頭を深々と下げたりした。

 そんな中、議員が集まって、枝野代表らも正面にすわり、指名を受けて辻元国会対策委員長がマイクの前に立った。

 辻元氏は、「みなさまいよいよ今日から本格的な論戦が始まります。みなさま一致団結して行きたいと思いますっ」と声を張り上げ、「よっし」と声がかかった。そして、「最初の入り口は統計国会から入るということではないでしょうか。この『統計不正』、『賃金偽装』、『アベノミクス偽装』、これを明らかにしていく。それなくしてどんな政策を議論しても基礎がありませんっ」と力を込め、「そーだっ」と沸き上がった。そこで、辻元氏は「それにしてもこの厚労省、根本(こんぽん)からおかしいですね。根本(こんぽん)から、根元(ねもと)から変えなきゃだめじゃないですか」と話し出し、「そーだっ」と声がかかった。ここで、辻元氏は、反応に不満なのか「根本(ねもと)に変わってもらいましょうよ、厚労省の。根本(ねもと)から変わってもらうことなくしてこの真相解明はありません」と、繰り返した。ここまできて、出席議員は「根本(こんぽん)」と「根本(ねもと)厚労大臣」と、かけていることに気づき、笑いと共にさらに大きく「そーだっ」との掛け声がかかった。そして、この後代表質問に立つ枝野代表が、あいさつに立った。

 枝野氏は「まっとうな政治どころか、まっとうな社会が壊されようとしているという危機感を持ちながら質問に立たせて頂きたいと思います」などと決意を語った。そして、数日前に報道されていたインフルエンザに触れ、「不安なのはインフルエンザ等がありまして一週間以上演説も歌も歌ってないものですから、声がちゃんと出るかどうか。心配ではございますが、ぜひ皆さんの大きなご声援をお願い申し上げて、それを背中に受けながら頑張ってきたいと思います。どうぞよろしくお願いします」と声を張り上げ、笑いと拍手でわき立った。

 壇上の枝野氏は、「今年5月新しい時代が始まりますっ。立憲民主党は結党以来訴えている『多様性を認め合い、お互いさまに支え合う』いう新しい社会像を、さらに高く明確に掲げ、次の時代の扉を開きますっ」と力を込め、野党席から「よっし」「そうだっ」などと声があがり、拍手がわいた。そして、「誰もが一人では乗り越えられない困難に直面することがあります」などと「支え合い」を語り、「何かのきっかけで差別や偏見、排斥などの対象にされかねない少数者の側面を、だれもが一つや二つは抱えています」などとと「多様性を認め合う」よう呼びかけると、自民党席からは「質問しろよー」などとヤジが飛んだりした。

 そして、枝野氏は「不正統計問題」について質し、「統計数値の意義と重要性が全く理解されていないことに私は強い危機感を覚えますっ」と力を込めた。これに野党席から「そうだあ」などと声が上がる一方、自民党席からは民主党政権下でも「不正」が続いていたことを踏まえ「民主党政権の時考えろよお。反省ないよお」などと声があがった。そして、野党席から「反省しろ―」と声があがると、自民党席から「関係ないじゃないかー」と声があがり、これに野党席から「なんで関係ないんだあー。誰だあ」などと騒然とした。この中、枝野氏は「国会は不確かな不確かな統計数字などを基にして予算案や法案審議を強いられます。『まっとうな議論』のために、到底容認できませんっ」と語気を強め、野党席からは「改ざんしたの誰だあ」んどと声ががった。そして、枝野氏は「事態の深刻さを理解しない根本大臣は罷免すべきですっ」と声を張り上げると、すかさず「そうだあ。ねもとから変えろー」と声があがり、笑いが起きたりした。

 答弁に立った安倍総理は「不適切な調査が行われ、雇用保険、労災保険といったセーフティーネットへの信頼を失う事態を招いたことについて国民の皆様にお詫び申し上げます」と早口で原稿を読み上げ、「高い専門性と信頼性を有すべき統計分野において…」などと、そのまま続けた。そして、「根本大臣には引き続き不足した給付の速やかな支払いや、今回の事案の徹底した検証、再発防止の先頭に立って全力で取り組んでいただきたいと考えております」と、あっさりと、枝野氏の「罷免要求」を拒否した。

 それを受け、登壇した根本大臣は、マイクの前に立つやいなや、「辞めろーっ」とヤジを浴びた。そして、12月20日に、役所から統計について「不正の報告」を受けながら、21日にそのまま発表したことについて「毎月定例の業務として事務的に発表したものであり…」などと語り、野党席からは「えーっ」「おかしいだろっ」などとヤジがわき上がって騒然となり、たまらず大島議長が「ご静粛にっ」とたしなめた。そして、そのまま予算案の閣議決定でサインしたことについて「予算案との関係性を判断できる状況にありませんでした」と「釈明」し、またもや「大臣失格だー」「大臣失格ですっ」と声が上がった。続けて「省全体として根本からただし…」などと語ると、「根本がダメなんだよー」とヤジが飛び、それでも「国民の皆様の信頼の確保に努めてまいります」などと通り一遍の決意を語るので「なぜ、そのまま発表したんだー」と声が上がるとともに、「ねもとから変えろー」と、叫び声が議場に響いた。

 ふと、自民党席を眺めると、予算委員長の野田聖子氏がやり取りを真剣にみつめていた。そういえば、予算委員会を控えて、委員長としての意気込みを語っていたっけ、などと考えた。

■「こんなインチキが行われていたりすると…」

 「毎月勤労統計の問題は大変なことだ。いろんな政策を決める時の前提が、エビデンス(証拠)として、統計でできた数字をもとに作り上げていく。家を建てる時の土台が壊れているという話で。今回厚生労働省だったが、国民の間では疑心暗鬼だ。一事が万事というか。氷山の一角というか。こんな基幹統計、絶対にあっててはならない主要な統計すらこんなインチキが行われていたりすると、普段の統計も適当にやられてるんじゃないかというところで、政治の信頼、政策の信頼を失うことになる。委員長としてはやっぱりしっかりと政策の土台である統計について国民が「うん?」と思ったまま進んでいかないように注視していきたいなと思う」

 ヤジで騒然とする議場を眺めながら、この後、代表質問の後に控えている予算委員会審議に思いが広がった。「質疑は荒れそうだな。しかし、根本大臣の答弁は…」などと考えた。

石塚博久

石塚博久(TBS政治担当解説委員)

1986年、日本経済新聞社入社。大阪本社証券部、名古屋支社(愛知県警、名古屋市役所担当)を経て、90年から東京本社政治部。官邸クラブ(海部政権)、野党クラブ(社会党土井委員長、田辺委員長)、平河クラブ(自民党竹下派担当、92年竹下派分裂など)等を担当。
1996年TBS入社。政治部で新進党クラブ、平河クラブ(自民党橋本派担当)、外務省(田中真紀子外務大臣)等を担当。その後「筑紫哲也NEWS23」ディレクター、デスクを経て、「時事放談」を制作プロデューサーとして立ち上げ。現在、TBS報道局政治担当解説委員。
著作:「官僚」(共著)新聞協会賞受賞