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TBS NEWS

2018年12月11日

議会の“華”ヤジを考える

[ TBS政治部記者 後藤俊広 ]

 臨時国会が閉会しました。48日間あっという間に過ぎた気がします。

 今回は、この国会を振り返る意味で国会論戦のあり方、特に“ヤジ”について考えたいと思います。

 「ヤジは議会の華」と昔から言われ、いかに軽妙で説得力のあるヤジを発せられるかが議員の力量を問う一つの試金石とされてきました。確かにヤジによって論戦のポイントや答弁のどこが問題か等、審議がわかりやすくなることがあります。また、やりとりに臨場感やアクセントを与える“伴奏”的な役割を果たすこともあります。

 しかし、ヤジによって本来の“主旋律”であるべき論戦の流れが断絶するとしたら、どうでしょうか。外国人労働者の受け入れ拡大を目指す「入管難民法改正案」の審議で、安倍総理が答弁を行っていた際、こんなことがありました。

 「今ですね。なぜ山下大臣が答えをしたかということについて言えば(野党ヤジが飛び交う)すいません委員長ちょっと外からですね、うるさくて、あの…(委員長『御静粛にお願いいたします』)」(安倍首相)

 「よろしいでしょうか。こういう質疑はですね…なるべく静かな環境の中で、しっかりと議論するべきであってですね、委員以外の方が大きな声でやじを飛ばすというそういうことは、なるべくやめていただきたいなと思うわけでございます」(安倍首相 [12.6 参法務委員会])

 野党議員が、法務省がまとめた技能実習生が事故や自殺などによる死亡事例を示し、安倍総理に認識を質した際の発言です。

 質問に答える前に、ひとしきりこのようにヤジに反論する一幕がありました。

 安倍総理はヤジに敏感に反応します。歴代総理を振り返ってみると小渕元総理や小泉元総理などは激しいヤジを飛ばされても“われ関せず”と答弁を続けていた記憶があります。

 これに対して安倍総理はかなり神経質です。自身の答弁の最中に気になるヤジが発せられると答弁を中断し、ヤジ相手に対し反論することがままあります。

 国会審議では議員への割り当てられた質問時間は事前に決まっているためヤジの応酬が続けばその分、質問時間が削られ本来求められる議論が深まりません。

 安倍総理もヤジを“奇貨”として、これに反論することで追及をかわそうとしているのかもしれません。一つの国会戦術なのでしょうか。

 こうしてみると野党側は安倍総理へヤジを試みることで自らの質問時間を実質削って相手を利するという皮肉な結果を招いているのでは、とも思えてきます。相手を見て戦略を練り直すことも必要ではないでしょうか?

 先ほど紹介した安倍総理の答弁には続きがあります。法務省がまとめた技能実習生の死亡事例に関して次のように答えました。

 「亡くなられた例については、私は今ここで初めてお伺いをしたわけでありまして、ですから私は答えようがないわけでありまして…」(安倍首相)

 ちなみに質問に立った野党議員に与えられた質問時間は5分でした。

 外からヤジを飛ばす前に死亡事例を国会で初めて知って安倍総理はどう思ったのか?こうした現実を受け止め、実習生の就労環境の改善にどう取り組むのか?果たしていまの改正案で十分に対応できるのか?こうした問いを冷静に理詰めで質していくのが効果的な戦略ではないでしょうか。

 またそれが国会審議を注視する一般の国民の人たちにとっても、より望ましい形ではなかったかと思います。

後藤俊広

後藤俊広(TBS政治部記者)

政治部官邸キャップ。小泉純一郎政権から政治取材に携わる。
プロ野球中日ドラゴンズのファン。健康管理の目的から、月100キロを課すジョギングが日課。