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TBS NEWS

2018年11月16日

「閣議後会見、衆院予算委員会」の裏側~激突!臨時国会

[ TBS政治担当解説委員 石塚博久 ]

 朝、9時に始まる衆議院の予算委員会の2日目の審議を覗こうと、歩いていると国会の2階部分にある衆議院の食堂から早くも光が漏れていた。

 何年か前からなくなったのだが、かつては、朝にはゆで卵とバタートーストとコーヒーの「モーニング」をやっていたのを思い出し、「始めたのかしらん」と小走りに向かった。担当のころ国会内で閣議や朝早くの委員会があるときは、よく利用していたのだ。

 しかし、入ってみてびっくり。
いくつかのテーブルを囲んで人だかりができていて、テレビカメラのほかカメラマンがスタンバイしていた。もちろん、「モーニング」を食べているわけではなかった。

 週2回の閣議の後には各大臣の記者会見があり、普通、大臣がそれぞれの役所に戻ってやるのだが、それでは予算委員会に間に合わないので、国会のどこかで会見を済まし委員会室に急ぐのだ。

 とりわけ、今日の予算委員会のように全大臣出席の場合には国会のどこかで全員が記者会見をやることになり、各省担当の記者らで食堂もあふれかえっているというわけだった。

 ならばと、廊下をみると、案の定、片隅に何か所もカメラが立ち、記者らが周りを取り囲んでいた。

 食堂の入り口では、どっかの役所の報道担当なのだろう、女性が大臣の歩く場所を確保しようと、「窓際に立っていただいて。ふさいじゃうから」と記者が入るたびに呼びかけたりする。かと、思うと携帯電話を手に人込みから離れてきたどっかの派手な身なりの女性記者が、「誰かと思ったら、なによお」と身をくねらしたりする。

 恋人からの電話かしらなどと見てると、「頭撮りぐらいしてもらわないと、みんなやりにくさあるから」などと「取材」の話で、「恋人は取材先かい」と勝手に想像させられたりと、かと思うと閣議は長引いているらしく、職員は「7分遅れですよね」「42分に来ればなあ」と、気が気でない様子で、朝からなんともあわただしいのだ。その中、どこからか「官邸しゅぱーっつ」と廊下に声が響き、「各社さんお願いしまーす」などと緊迫が走った。そして、食堂の中では、麻生財務大臣の記者会見が始まった。

 始まってわかったのだが、隣のテーブルでは石田総務大臣が、そしてその向こうでは石井国土交通大臣が会見しているのだ。

 記者の質問など、ただでさえうるさくなりそうなのに、それぞれの役所が張り合うように、みんなに聞こえるようにとなんとハンディのスピーカーを立てて、大臣も質問もマイクでしゃべるので、とてもうるさくかつ聞き取りにくいのだ。

 麻生大臣のところでは「イギリスのデジタル課税について、、、」などとマイクを持った記者が質問し、麻生大臣が「これまでOECDを中心として国際的な動きが進められているのが現状だと思います。イギリスの電子サービス課税については、、、」と、なんとも難しい話をしていた。

 さすがに、財務省の第一線の経済記者だけに、みんな聞きながら机の上のパソコンにそのままカチャカチャ打ち込んでいて、「市場が反応する重要発言はそのまま送るんだろうな」と思ったりした。中には、どこの記者か、英語で入力している「すごい人」もいるのだ。

 そして記者が、今日の読売新聞の一面を掲げて見せて「軽減税率の穴埋めにインボイスを使うのですか」などと、気負いこんで聞き、麻生大臣は「今の段階で、その人の考え方としか言いようがない」とすましていなし、麻生大臣の会見は終わった。

 廊下に出ると、一角でなおも世耕大経産大臣が会見中だった。

 記者から「アメリカの対イラン経済制裁が間もなく始まるが、日米交渉は今後どうなっていきますか」などと聞かれ、世耕大臣は「これまでですね、日本政府からアメリカ側に対してエネルギーの安定供給や日本企業の活動に悪影響が及ぶことがないようにですね、繰り返し申し入れを行ってきております。現在もその状況が続いているということに尽きると思います。交渉中の話でありますので、これ以上の詳細については、お答えは控えたい」などと話していた。

 脇を通り過ぎて3階に上ると、予算委員会が始まる第一委員室がある。
部屋のへりが記者席になっていて、その上の天井との間が階段状のカメラマン席と傍聴席になっている。上がってみると、まもなく始まる2日目の予算委員会の審議を控えて最前列でカメラマンが構えていた。下を眺めると、ちょうど安倍総理が入ってきて、さかんにフラッシュが光った。

 そして、三々五々、議員が集まりだし、自民党の後ろのほうの席に石破茂議員も入ってきた。そして、早くから着席していた村上誠一郎議員が話しかけると、後ろを振り向いて、なにやら親し気に話しだした。

 村上氏は先の自民党総裁選挙で石破氏支持を打ち出しており、石破氏も「総裁選ですっかり村上さんと仲良くなったよ」と振り返る間柄ぶりを見せていた。

 一方では、前日の委員会で、偶然、安倍総理とネクタイが全く同じで、見せ合って苦笑いしていた立憲民主党の逢坂誠二議員が安倍総理に歩み寄った。

 「今度はなんだろう」、とみていると、またネクタイを持ち上げて見せた。それを見て安倍総理は「オー、今日は違うんだあ」と笑いながら声を上げるのが聞こえた。さっき記者会見していた麻生財務大臣も立ち上がってなにやら話しかけ、激しい質問で知られる逢坂氏が2人にしばらく「取り込囲まれて」しまっていた。

 そして、野田聖子委員長が委員長席に着くと、脇に座る菅官房長官と何やら話し込みだした。「なんともそれぞれ、にぎやかだなあ」と思ったりした。

 すると、前を若い衛視が横切り何かと思うと、カメラマンの一人に近づいた。そのカメラマンはジャンバー姿で、「ジャンバーでないですか」と、咎めるように尋ねた。

 なんか、規則があるのだろうと思って見てると、その古参のカメラマンは振り返って「防寒具だよっ」と衛視をにらみつけた。その勢いに、衛視は「そうですか、一応確認させていただきました」などと、ひるんんだ様子で引き下がっていった。もちろん、あたりは熱気で汗がでるほど暑かったのだが。

 ほどなく、質疑が始まり、国民民主党の後藤祐一議員が片山さつき地方創生大臣の「国税庁口利き疑惑」を取り上げ、「Xさんが片山大臣の私設秘書だったと思われる、否定されてますけど、Xさんという方にお願いをして100万円を渡して何とか青色申告取り消していうのは何とかなりませんかという税務上のお願いをしたと」と週刊誌に報道された疑惑を説明した。

 そして、誰かの「参議院の通行証」をかざして「これは参議院の私設秘書しかもらえないバッチと通行証です。南村さんはバッチと通行証を持ってましたか」と声を張り上げた。これに、片山氏はいつものように「トコトコ」と時間をかけて答弁席に歩み寄り、上のカメラマン席からは激しくフラッシュが光った。

 そして、『南村氏のバッジと通行証』を聞かれた片山氏は、メモを見ながら報道内容を否定した上で、「南村氏は秘書として契約したこともなく、給与報酬などを払ったこともございませんし、指揮、命令、使用をしたこともございません」などと長々話し出し、野党議員から「質問に答えろ」などと激しくヤジがあがった。

 それでも、片山大臣が「なぜそのような定義を訴状でしたかと言うと」と週刊誌を相手取った裁判の話をしだし、野田委員長は「質問に答えて」とさとした。それでも、片山大臣は「私設秘書については日本の法令上定義がありません。定義がない以上、、、」と続け、野田委員長は再び「質問に答えてください」と声を張り上げた。

 そして委員会室はヤジで騒然とする中、それでも片山大臣は「使用関係があるということがあっせん収賄の条件ですから、使用関係がないということで、、、」と答弁を続け、野田委員長は、苛立たし気に「質問に答えてください」と語気を強めた。そして、そこでやっと片山氏は「そのうえでお答えしますが」とし、期間を示したうえで、『南村氏のバッジと通行証』について「保有されておりまして、、、」と答え、委員会室は「私設秘書じゃないかあ」などと、さらに騒然とした。

 片山大臣の後ろで答弁を聞きながら、安倍総理は腕を組んで眉間にしわをよせ困った表情を続けていた。

石塚博久

石塚博久(TBS政治担当解説委員)

1986年、日本経済新聞社入社。大阪本社証券部、名古屋支社(愛知県警、名古屋市役所担当)を経て、90年から東京本社政治部。官邸クラブ(海部政権)、野党クラブ(社会党土井委員長、田辺委員長)、平河クラブ(自民党竹下派担当、92年竹下派分裂など)等を担当。
1996年TBS入社。政治部で新進党クラブ、平河クラブ(自民党橋本派担当)、外務省(田中真紀子外務大臣)等を担当。その後「筑紫哲也NEWS23」ディレクター、デスクを経て、「時事放談」を制作プロデューサーとして立ち上げ。現在、TBS報道局政治担当解説委員。
著作:「官僚」(共著)新聞協会賞受賞