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TBS NEWS

2018年11月8日

内閣改造から1か月、新閣僚らの答弁に注目

[ TBS政治部記者 後藤俊広 ]

 国会の本格論戦が始まりました。
舞台は今年度の補正予算案を審議する衆参の予算委員会ですべての閣僚が出席して与野党双方の議員が質疑を行っています。

 内閣改造から1か月、新閣僚らが国会答弁をどう乗り切るのか注目してやりとりを見守りました。

 今回は対照的な新閣僚2人の答弁ぶりを取り上げたいと思います。

その1……多弁な閣僚

 野党議員「じゃあ何人ぐらい増えるのかおっしゃってください」
 新閣僚「まず移民ということについてでございますけれども、(野党からヤジ)いやそれは紛れがあります、というのは(野党「時間がない」)国連のそれは明らかにしてもらう(野党怒号)。おっしゃているのは正式な法的定義はありませんと国連は言っています・・・」

 衆院・予算委員会の1コマです。
答弁の主は53歳で初入閣を果たした検事出身の山下法務大臣。
外国人労働者受け入れ拡大を目指す「入管難民法改正案」を担当しますが、国会の場でたびたび野党と衝突しています。 野党側が「話が長くしかも質問に正面から答えていない」と反発するのです。

 一般の社会でも話の長い人はあまり歓迎されませんが、特に衆議院の場合はルールで質疑者の持ち時間は自身の質問と答弁者の答弁の合算となります。

 大臣の答弁が長いほど質疑者の持ち時間が減るため、野党議員の質問の場合、答弁が余りに長いと怒号が飛び交う事態になるのです。

 山下大臣の答弁ぶりもある種の高揚感に包まれ、野党議員のヤジもどこ吹く風です。 こうした所作も野党からすれば“挑戦的”と見えるのでしょう。 山下大臣の例は新任大臣にありがちなパターンと言えます。

 初入閣、しかも50代の若さとなれば当人は喜びの余りやる気に満ち、肩が回るのが自然です。それが結果として空回りする恐れも多々あります。 閣僚の失言・問題発言が就任から間もない時期に多いのも空回りの一つの例と言えます。

 特に山下大臣は「入管難民法改正案」の所管大臣です。
法案成立のためには野党側の一定の理解と協力が必要となります。
法案審議の中の答弁で山下大臣が野党側とどれぐらい血の通わせた議論や対話ができるのか、この国会の大きなポイントの一つです。

その2……答弁に苦慮する閣僚

 閣僚「なぜ選ばれたか私はわかりませんが、それは総理が適材適所と思って選んでいただけたと思って、その選んでいただいた人に立派に任務を果たすようにしっかりと取り組んでいくつもりでございます」

 参院・予算委員会での「五輪担当相にふさわしいと思うのはどこか」という野党の質問に対する桜田五輪担当相の答弁です。

 桜田大臣の経歴や本人の答弁からして五輪担当大臣は想定外のポストだったようです。 “入閣待機組”にとって初入閣=大臣になることが唯一かつ最大の目的で、どこの大臣ポストかは二の次、三の次というのが多くの議員の本音です。

 そのため、就任直後から新閣僚は所管の行政分野について“猛勉強”を行いますが、中にはなかなか馴染めない閣僚もいます。 こうした閣僚に狙いを定め、野党側は“大臣の資質”を問うのです。

 「東京オリンピック・パラリンピックの基本コンセプトは?」
 「五輪に関する国の関連予算は?」

 こうした質問が矢継ぎ早に飛び、桜田大臣はたびたび立ち往生。
後ろに控えるスタッフが資料を提示したり耳打ちしたりして辛うじて答弁しました。

 かつて、沖縄北方担当大臣に北方4島の名前を尋ねるように、野党側は時に大臣の知識を問い、その見識を質す戦略をとります。 今回は桜田大臣がその標的となったと言えます。

 桜田大臣は野党側の質問は「事前通告がなかった」と不満を漏らしますが、就任から1か月という準備期間を考えればあまり褒められた対応ではありません。

 今回2人の新閣僚の答弁ぶりについて考察しましたが、改めて国会のやりとりを聞いて感じることがあります。 政府与党、野党の区別無く国会の議論が矮小化されているのでは、という点です。

 つまり、委員会室という小さな部屋で閣僚らは質疑者に対して質疑者は閣僚等に単に個別にやりとりを交わしているという印象が拭えません。

 国会での議論は一般の人々に広く知ってもらうためのものであるはずです。 野党の質問に答える閣僚も形式としては野党議員への答弁ですが、一般の有権者が聞いているということを常に意識して答弁することが求められます。 質疑に立つ側も、単に党利党略からの発想でなく、多くの有権者が「これは是非知りたい」と思うであろうテーマに重点的に取り組むべきだと思います。

 臨時国会はまだ1か月以上会期が残されています。
多くの有権者や一般の人々の目を意識した論戦が行われていくのかどうか、これからもじっくりウォッチしていきたいと思います。

後藤俊広

後藤俊広(TBS政治部記者)

政治部官邸キャップ。小泉純一郎政権から政治取材に携わる。
プロ野球中日ドラゴンズのファン。健康管理の目的から、月100キロを課すジョギングが日課。