現場から、SDGs 2030年の世界へ

2020年12月18日【静岡放送】
世界遺産の「やっかい者」を名物に活用

富士山世界遺産の構成資産の一つ、静岡市の「三保松原」。ここで生まれる“ある厄介モノ”を使って、人気メニューを作り上げた飲食店の取り組みです。

静岡市にあるこちらの飲食店で、お客さんのほとんどが注文するというのが、かつおを直火で炙った「たたき」です。

「すごくおいしいです。口の中で、すごくいい香りが広がります」(記者)

この香りをもたらすため火にくべられるのは、“乾燥した松の葉”で、世界遺産の“厄介モノ”。この取り組みは、SDGsの理念に沿った調理法なんです。

「何ができるかなと考えたときに、うちは料理店ですから、料理でどういう風に表現するかを考え、ここにいきついた」(なすび 藤田尚徳 専務)

天女が舞い降りた伝説が残る静岡市の「三保松原」。ここは富士山世界遺産の構成資産の一つです。飲食店の社員たちは、2年ほど前から三保松原の清掃活動を続けています。

「2013年に世界遺産に登録された三保松原。近年は観光客の減少や、この松の枯れ葉が松の生育を妨げていることが問題となっています」(記者)

三保松原にはおよそ3万本の松がありますが、1年を通して、枯れた松の葉が大量に発生します。枯れた葉は地面に落ちますが、松の葉は土に還った際、水をはじくという性質があり、松の生育にとっては大きなマイナスになると言われています。

「外食をやっている、やっていないとかではなく、地域に育てていただいた会社なので、地域に何かしらの恩返しができないかなという意味で取り組んでいる」(なすび 藤田尚徳 専務)

もともと、こちらの飲食店では、「かつおの藁(わら)焼き」というメニューがありました。枯れた松の葉が藁の代わりになるのではないかと考え、試した結果、今の形にたどりつきました。

「皮目もパリッとしますし、中まで火が入ってしまうと、たたきでなくなってしまうので」(炙之介 漆畑祐三 料理長)

松の枯れ葉は、藁よりも長い時間燃えるため、たたきの調理に向いていることも分かりました。

「やっぱり松の香りが(かつおに)のりますね。藁だけでも十分おいしいんですけど、なので三保松原焼きという名前」(炙之介 漆畑祐三 料理長)

燃料となる松の葉は安全に使えるものを見極めていて、資源を守るという観点から市の許可を得て使っています。

「地域があって自分たちがいるんだという認識で、そこに向けて商売の原点をもう一度、見つめ直す必要があると思うし、その中で地域として歩んでいくことが大事だと思う」(なすび 藤田尚徳 専務)

いわば、世界遺産を隠し味にした「かつおの三保松原焼き」。地元の環境を守るだけでなく、その特性を生かした継続的な経済活動も実現しています。