現場から、SDGs 2030年の世界へ

2020年10月22日【TBSテレビ】
【現場から、コロナ後の世界】英、逆転の発想で“幽霊船”ツアーが人気

新型コロナウイルスでは観光業も大きな影響を受けていますが、イギリスには、これを逆手にとって大盛況のツアーがあります。記者が同行してきました。

イギリス南部の小さな港、マデフォードを出た船は沖へと向かいます。すると…

「見えてきました。クルーズ船です。1隻、2隻、3隻、4隻、ここから見えます」(記者)

新型コロナウイルスの影響で休業中の大型クルーズ船です。日本のダイヤモンド・プリンセス号での集団感染をきっかけに、大手のクルーズ船会社は次々に運航を停止しました。しかし、港に接岸すれば使用料金がかかるほか、スペースの問題もあり、多くのクルーズ船が食料や燃料を補給するとき以外はこうして沖で錨を下ろしているのです。

このツアーはそうしたクルーズ船を間近で見るもので、「幽霊船ツアー」などとも呼ばれています。料金20ポンド(およそ2700円)ですが、定員の30席があっという間に売り切れるほど人気です。

「たまげましたね。ばかデカいし背も高いし」(ツアー参加者)

「今年初めにあの船に乗ったので、ちょっと思い出に浸ろうかと思って。本来あるべき姿じゃないのを見るのは寂しいですけどね」(ツアー参加者)

ツアーを発案したのは、地元の人たちが利用するフェリーを運航するポール・ダラムさん。

「ある日、乗客たちに『クルーズ船を見に行きたい?』と聞いたら、たくさん手が挙がったので、“これはいい商売になる”と思ったんです」(ツアーを発案した ポール・ダラムさん)

ダラムさん、実は、かつてクルーズ船の副船長でした。こちらのクルーズ船の船長は知り合いで、汽笛を鳴らしてくれました。航海中なら1隻あたり600人ほどのクルーがいますが、ダラムさんは、「今はメンテナンスに必要な80人から100人程度だろう」と推測しています。つまり、残りのスタッフは仕事がない状態が続いています。別のクルーズ船のレストランで働いていたデライラ・カストロさんもそうした一人です。

「1月の終わりにはお客さんがいなくなりました。そこから3か月はひたすら船の消毒作業して、その後、家に帰されました」(クルーズ船に勤務していた デライラ・カストロさん)

収入は途絶え、今は地元のフィリピン・マニラ近郊で実家にこもっています。

「乗客と接することや、皆さんの笑顔が恋しいです」(クルーズ船に勤務していた デライラ・カストロさん)

クルーズ船は現在、同じ国の港だけを回るコースを中心に一部で運航が再開されていますが、業界団体は、「関連産業も含めて33万人余りが職を失うだろう」と予測しています。