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2020年4月26日【熊本放送】
なぜ今必要?内密出産

予期せぬ妊娠をした女性が特定の機関だけに身元を明かし、匿名で出産する「内密出産」。その運用を始めた病院があります。

「まずは民間で事例を作ってみて、そこから始まる」(「慈恵病院」蓮田健 副院長)

親が育てられない赤ちゃんを匿名でも預かる、いわゆる「赤ちゃんポスト」を運営する熊本市の慈恵病院は、去年、内密出産の運用を始めると発表しました。

これは、予期せぬ妊娠をした母親が特定の機関だけに実名を明かして匿名のまま病院で出産し、生まれた子どもは特別養子縁組などに託され、成長後に自分の出自を知ることができるというものです。

国内ではまだ法整備がされておらず、戸籍や出産費用の問題があるとされています。それでも慈恵病院が内密出産の運用に踏み切ったのは、「赤ちゃんポスト」でも救えなかった命があるからです。

「ゆりかご(赤ちゃんポスト)に預けられる赤ちゃんのお母さんは、多くが自宅で出産するわけです。自宅出産をして赤ちゃんを遺棄した、しようとしたケースも含めると、生まれたときは亡くなっていたということも少なくない」(「慈恵病院」蓮田健 副院長)

国内でも、孤立出産をした母親が生まれたばかりの子どもを遺棄する事件が起きています。国の統計では、0歳児の置き去りなど児童相談所が対応した件数は「年間60件以上」という結果もあります。

「SOSお母さんと赤ちゃんの相談電話です」(相談センター)

慈恵病院の相談センターには、予期せぬ妊娠をした全国の女性などから年間6000件以上の相談が寄せられます。

「内密出産を希望しています。もう、出産予定日は過ぎました。病院での受診は1度もできていません」

「お金も今、千円しかないんです。お願いします、助けてください」

これは、今年寄せられた妊婦からの悲痛なSOSです。

「1人で産んで、どうにかするしかないと思っていた。どこか分からないところに(赤ちゃんを)置くしかないと思っていたと言う人は実際にいる」(「慈恵病院」新生児相談室・民永里織さん)

背景には経済的な貧困のほか、夫や両親から虐待を受けた妊婦が身内に相談できず、ひとりで悩みを抱えてしまう状況があります。内密出産には、そういった女性を救う可能性があると相談員の民永さんは考えています。

「孤立出産と自宅出産、遺棄される赤ちゃん、遺棄してしまうお母さん。そこを何とかする内密出産は大事なのかなと」(「慈恵病院」新生児相談室・民永里織さん)

慈恵病院はこれまで、世間に伝えられることのない母親たちの声に耳を傾けてきました。「母子を守る制度の充実が、平等な出産や子育てにつながる」。蓮田副院長は社会の変化に期待しています。

「遺棄や殺人も少なくなってくると思いますし、『自分は大事にされているんだ』と自信をもって人生を歩める子ども、大人になっていく。そういった社会に近づくのではと期待している」(「慈恵病院」蓮田健 副院長)