現場から、SDGs 2030年の世界へ

2020年3月22日【TBSテレビ】
聴覚障害ダンサーの願い

先月、障害者による劇団がアメリカから来日し、ミュージカルを上演しました。劇には障害のある観客も楽しめるよう、ある工夫がなされていました。

先月、都内で上演されたミュージカル「HONK!」。童話「みにくいアヒルの子」をもとにした作品で、アメリカの障害者による劇団「Phamaly」が来日し、上演しました。

今回、初めて日本人2人がキャストとして参加。その1人がダンサーの鹿子澤拳さん(25)です。鹿子澤さんは生まれつき聴覚障害があり、両耳とも補聴器がないとほとんど聞こえません。

「最初は踊るっていうそのもの自体を見てインプットして、後々に『ここにこういう音がついてるんだ』とか、ゆっくり聞いて音楽を知っていく」(鹿子澤拳さん)

ストリートダンスなどを学び、国内外で活躍する鹿子澤さんは、今回、オーディションを受けて「HONK!」に参加。アメリカでの上演を経て凱旋公演となりました。

「I think you look delicious(あなたはとてもおいしそうよ)」(「HONK!」より)

演じるのは、主人公のみにくいアヒルの子を食べようとする猫の役。実は2人で1役を演じています。体で表現することが得意な鹿子澤さんがダンスとアメリカ手話で猫を演じ、視覚障害があるアメリカ人のサマンサさん(29)が猫の声を担当しているのです。

「(サマンサさんに)いろんなところにタップして『始まったよ』みたいな合図、キューを入れてもらって、じゃあここで踊るみたいな感じで、サム(サマンサさん)は視覚障害で見えなくて、僕は聴覚障害で聞こえない。補い合うことでよりパワーアップみたいな」(鹿子澤拳さん)

この公演は脳性麻痺や自閉症などの障害があるキャストが演じているだけでなく、見る人たちのための工夫もあります。

「試してみてください」(劇団スタッフ)

その1つが上演前の「タッチツアー」。視覚障害や知的障害がある人に物語のイメージを膨らませてもらうため、舞台の上でセットや小道具に触れてもらうものです。

また、事前に手話によるあらすじの説明も。そして、舞台が始まると客席のタブレットに易しい日本語の字幕が表示されます。

観客たちは、目で、耳で、肌で感じながらミュージカルを楽しみました。

「楽しかった。アヒルがおもしろかった」(初めて観劇した男の子)

「(タッチツアーで)衣装とか舞台装置、小道具とかも直接触れさせていただいたので、すごくイメージがつきやすかったです」(視覚障害がある女性)

2人1役で猫の役を演じた聴覚障害があるダンサー・鹿子澤さんは、エンターテイメントを楽しむことが障害について知ってもらうきっかけになることを願っています。

「障害あるなし関係なく一人が自分、人間として誰でも出られるような、そういう舞台が広まってほしい」(鹿子澤拳さん)