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2020年3月10日【TBSテレビ】
東京大空襲 落語で語り継ぐ

ひと晩で10万人が犠牲になったという東京大空襲から10日で75年です。そのすさまじい被害の様子を、あえて落語で語り継ごうという噺家の男性がいます。

「がしゃんごしょん、がしゃんごしょん。なんだこれ、ひどいもんだね。なんだか3月と思えないような、熱くて仕方がないよ、まったく」

落語家の柳家さん八さん(75)。軽妙な「落語」で描くのは、すさまじい空襲被害の様子です。

「うっ、なんだよこれ。焼け死んだのかね、溺れたのかね。だめだよ、来ちゃいけねえ、見ちゃいけねえ。これは地獄だよ」

1945年3月10日の東京大空襲。アメリカ軍の無差別爆撃により、東京の下町一帯は火の海と化し、一晩で10万もの人が亡くなったとされています。さん八さんの落語は両親の実体験に基づいています。両親は、生後間もないさん八さんをおぶって必死に逃げ、火の中を生き延びました。

「(父親から)川の水が見えないぐらい、なんか浮いてんだよなあ。それ見たら驚いたよ。みんなそれこそ人間なんだよな、というようなね、話を聞いて」(柳家さん八さん)

壮絶な体験を落語にする。違和感を覚える客は多いかもしれないと思うものの、まじめに話すのとは違う伝わりやすさもあるはずだと、さん八さんは考えています。

「あっちこっち、なんだか訳の分からねえものがごろごろごろごろしてるよう。俺は昨日はね、材木かなんかだと思ってたんだ。電信柱が折れたとかよ。違うよ。俺いま踏んでびっくりした。柔らけえんだもん、ずるっといっちゃったら。人間の体だよ」

「お噺として生き生きとした会話で聞かせてもらうと、やはり全然イメージの喚起力というんですか、違いますね」(落語を聞いた人)

Q.授業と落語を比べてどうですか

「落語の方が分かりやすいところがある」(落語を聞いた小学生)

話しの最後は、「落語」らしく終わります。さん八さんの両親は、祖母が念仏を唱え続けたために防空壕に入るのが遅れました。ところがその防空壕は火の海にのまれ、逆に両親は命拾いしたのです。

「信心のおかげで“九死(きゅうし)に一生”だねえ。ううん、“空襲(くうしゅう)に一生”だよ」