かつて日本のエネルギーを担った北海道の石炭の産地では今、新たなエネルギー源として雪の研究が進められています。地元が「白いダイヤ」と呼ぶ雪。秘めた可能性に注目が集まっています。
札幌から北に50キロ。内陸の美唄市で開かれた冬のイベントで、新たなご当地グルメが振舞われました。
「アワビがやわらかくて、スパイシーでおいしい」
「海がない美唄市で取れたと思えない」
ライスも具の野菜もアワビも、すべて地元産の「美唄アワビカレー」。でも、このアワビ。海が無い内陸のマチで、いったいどうやって?
「完全閉鎖式陸上養殖って正式に言うんですけども」(雪屋 媚山商店 本間弘達社長)
雪原に設けられた温室。この中でアワビが養殖されていました。
「おいしいです。すごい、海の味」(記者)
温室の中は常に15℃以上に保たれていますが、ここは真冬の北海道。朝晩はマイナス20℃近くまで冷え込みます。暖房にコストがかかりそうですが、石油ボイラーなどは見当たりません。
「データセンターの熱が冬は暖房の熱として温室にいく」(雪屋 媚山商店 本間弘達社長)
温室に隣接するデータセンター。ここには東京の企業が利用する大きなコンピュータ=サーバーが置かれています。このサーバーから放出される熱を温室の暖房に使っているのです。
「サーバの熱は、黙っていると地球に放出されるだけでもったいないが、回収すれば有効に使える」(雪屋 媚山商店 本間弘達社長)
一方で、データセンターは夏になると60℃以上にも暑くなります。本州では、莫大なエネルギーと費用をかけて冷房しますが、ここでは…
「美唄市の排雪を持ち込んでいる雪山。3000トンの雪が貯まる」(雪屋 媚山商店 本間弘達社長)
ひと冬で10メートル近く雪が降る美唄市では、23年前から除排雪で集まった雪を解かさずに貯蔵し、サーバーを冷却する技術を開発しました。すべて雪のエネルギーで賄うので、光熱費はほとんどかかりません。
「美唄市は石炭で栄えた街、石炭は『黒いダイヤ』と言われていた。私たちは雪を『白いダイヤ』と言っている。天から降ってくる“やっかい者”ではなく、宝物。有効に逆転の発想で使っていきたい」(雪屋 媚山商店 本間弘達社長)
除雪の負担や交通障害、時には災害も引き起こすやっかい者扱いの雪が、将来、日本のエネルギーの主役になるのかもしれません。