• ■2019年6月18日 掲載

【記者の目】「消えた留学生」問題はこれから

社会部・神保圭作記者

東京福祉大学は、東京の池袋と王子、群馬県伊勢崎市、名古屋市にキャンパスを構え、全体で、およそ5100人もの留学生が在籍しています。この問題が起きるまで、あまり知られてはいませんでしたが、留学生の数の多さは、早稲田大学に次いで全国で2番目。ベトナムやネパールなどアジア各国の学生が多く在籍しています。

所在不明の多くを占めたのは、「学部研究生」という非正規の留学生。原則1年間のコースで、正規の学部生になるための準備課程と位置づけられています。定員の枠がないことが、制度上の盲点でした。

そして、その多くは、出身国から直接来るのではなく、すでに来日していて、日本国内にある日本語学校を卒業した人たちでした。背景には、「日本語学校バブル」と言われるほど、国内に日本語学校が乱立し、多数の留学生を受け入れ続けてきた状況があります。日本語学校で学べるのは、通常、最長2年。次の進学先か就職先が見つからなければ、母国に帰らなければなりません。東京福祉大学の「学部研究生」は、その受け皿になっていたのです。

「学部研究生」は入学試験が書類選考と面接だけ。合格率は90%以上。日本語能力検定で最低レベルの「N5」もおぼつかない留学生や、学費の支払いが難しい留学生も受け入れ、その一方で、「アルバイトがしやすい」と強調していました。

「本来なら大学合格が難しい、成績が悪かった学生をたくさん救ってきた」「所在不明者は、救った学生に裏切られた形だ」というのが、大学側の言い分です。

では、そうした学生たちへの教育や指導は十分に行われていたのでしょうか?教室は、雑居ビルの一室や銭湯の2階にまで散在し、学生の急増に、対応が追いついていない実態を表していました。文科省などが行った調査は、職員1人当たりが受け持つ学生数が100人を超え、人手不足から十分な在籍管理が行えていなかったと指摘しました。

「学部研究生」の受け入れ増加に伴い、東京福祉大学の学費収入は、12億円も増えました。不適切な「留学生ビジネス」になっていたのではないか?と、疑問を抱かざるを得ません。

国の対応も、明らかに遅れました。文科省は、大学側から「退学」や「除籍」の数の報告は受けていましたが、その理由の報告を受けていなかったことが、遅れた理由のひとつとしています。留学生などの在留資格を所管する入管庁は、大量の所在不明者を出した「異変」になぜ気がつかなかったのか、十分な説明をしていません。

所在不明となった学生たちがどこへ行ったのか?私たちは、そのごく一部にしか、たどり着けていません。文科省と入管庁は、東京福祉大学から不法残留者について「突出して多い」としながらも、具体的な数を明らかにしていません。

一方で、入管庁は、東京福祉大学の学部研究生は、新たに入学を希望しても、在留資格を認めない方針を明らかにしました。日本語学校を出ても行き場がなく、「学部研究生」を受け皿にしてきた人たちは、今後どこへ流れていくのでしょうか?

政府が掲げた「留学生30万人計画」の末路、とは言いたくありませんが、問題はこれから。まだ終わっていません。

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