【現場から、】新しい時代に

 
2019年8月7日
ICU専門医不足を「遠隔」で支援

ICU=集中治療の専門医不足という課題を解消する新たなビジネスを取材しました。

千葉県柏市にある病院。消化器外科や内科がメインで、常時100人以上の入院患者を受け入れています。しかし、これまでは手術後の合併症など症状の急変に対応するには十分な態勢とは言えませんでした。そこで…

「手術後の方なのですが血圧が上がらなくて、それについてご相談したい」(辻仲病院柏の葉 前田孝文医師)

その相談相手は画面の向こう側に。集中治療医の中西智之さん(43)。場所は神戸市内のビルの一室でした。千葉の病院とはインターネットで結ばれていて、「遠隔」で治療の支援を行っているというのです。

「これは手術前のCTですね?」(中西医師【神戸】)

「はい、そうです。CTでフリーエアを確認しまして緊急手術を行うことにしました」(前田医師【千葉】)

「今の心電図モニター、見られますか?」(中西医師【神戸】)

「はい、わかりました」(前田医師【千葉】)

この日、相談したのは、腸に穴が開く「腸管穿孔」を発症した70代の女性患者について。手術後、血圧が上がらないというものでした。

「おそらく点滴の量が足りないので、輸液を1500ccほど1時間で投与していただけますか。もし低血圧が続くようでしたら、またご連絡ください」(中西医師【神戸】)

相談を始めておよそ3分。心電図モニターなどの情報を共有し、治療のアドバイスを受けました。

「ここぞという時に頼れる相手がいることがありがたい。安心して治療にのぞむことができる」(辻仲病院柏の葉 前田孝文医師)

「遠隔だけでは完結できない。現場に主治医の先生もいますし、看護師さんもいるので、コラボレーションしてというか、共同作業で、我々は専門医としての知識を提供して一緒にやっていく」(中西智之医師)

【集中治療医が足りない】

病院の勤務医だった中西さんは、集中医療の現場で専門医が不足していることに問題意識を持ち、3年前、ベンチャー企業「T-ICU」を設立。去年から遠隔で集中治療の支援をするサービスを始めました。

「箱は作りやすいので集中治療室(ICU)は地域ごとに一定数あるけど、なかなか専門医がまだまだ配置できない、不足しているのが現状です」(T-ICU社長 中西智之医師)

中西さんによると、日本全国に必要な集中治療医は5000人。一方で、学会が認定した専門医は1700人にとどまっています。専門医がいない現場では対応に苦慮することもあるといいます。

「(専門医がいない場合)最近はインターネット、Googleとか。適切な治療もできていなかった場合も、もしかしたらあったかもしれません」(T-ICU社長 中西智之医師)

【医師の長時間労働改善】

「外科の先生が日中に手術をして、手術が終わったら夕方から手術を受けた患者さんの管理を夜中じゅうしないといけない。それを遠隔で我々がサポート」(T-ICU社長 中西智之医師)

遠隔ICUを利用すれば、集中治療の専門医ら13人が24時間対応するため、主治医の負担軽減にもなるといいます。

「(遠隔ICUは)必要だと思いますし、医療の質を上げて、安心して暮らせる社会を作りたい。何とか乗り越えていきたい」(T-ICU社長 中西智之医師)