【現場から、】新しい時代に

 
2019年7月29日
「感覚過敏」にクワイエットアワー

光や音などに極度に反応してしまう「感覚過敏」という言葉、ご存じでしょうか。イギリスでは、これに配慮して照明や音楽を抑える「クワイエットアワー」という時間を設ける店が増えていますが、こうした対応は日本でも広がりそうなのです。

イギリス・ロンドンに住むトーマス君(5)。光や音などに極度に反応する感覚過敏に苦しんできました。発達障害の1つである自閉症スペクトラム障害の人に多く見られる特徴で、トーマス君はにぎやかな場所が苦手です。

「買い物は彼には大変な試練です。パニックになることもあるので、とても難しいのです」(トーマス君の母 ジョアナ・マテウスさん)

これは、感覚過敏の人がショッピングモールで見ている世界を再現した映像です。風船や照明の光などに極度に反応し、パニックに陥ってしまう様子を描いています。

「こうしたことから、64%の自閉症の人と家族が買い物を避けています。まわりの目を気にして、外出すら避ける人もいるのです」(イギリス自閉症協会 トム・パーサーさん)

そんな感覚過敏の人にも安心して買い物をしてもらえるよう、イギリスでは「クワイエットアワー」という時間を設ける店が増えています。

この日、トーマス君は母親とおもちゃの店にやってきました。このチェーン店では去年から全国145の店舗で、毎週土曜日の午前9時から1時間、照明を暗くし、音楽を一切流さない取り組みを行っています。

「普段は上から音楽が流れているんですが、今は…とても静かです。ちょっとした配慮ですが、トーマス君のような子にとっては大きな変化です」(記者)

あらゆるおもちゃに興味を示すトーマス君。これまで、ほとんど、おもちゃの店に来たことはありませんでした。母親は「子どものしつけができてない」などと、他人から白い目で見られることを気にして、おもちゃもインターネットで購入していたのです。でも、この日は…

「気をつけないと」(トーマス君)

光や音を怖がることなく、買い物を楽しむことができました。

「もう怖がらずにおもちゃを買えると思います。自閉症であっても、それは社会の中でかけがえのない個性なんだと伝えたいです」(トーマス君の母 ジョアナ・マテウスさん)

店側も、より子どもを温かく迎える環境ができたといいます。

「時々騒ぐ子や大声を上げる子がいるけれど、ちゃんと理由があるんだとスタッフの理解も進みました」(ジ・エンターテイナー ジョセフ・チェックリー店長)

イギリスでは、ほかにも感覚過敏の人が安心して過ごせる環境作りが広がっています。

こちらは、児童館に併設された「センサリールーム」という照明や音楽を工夫した部屋。騒がしい空港やサッカー場にも防音を施した「センサリールーム」の設置が進んでいます。

イギリスの取り組みを参考にして日本でも27日、川崎で行われたJリーグの試合会場に「センサリールーム」が初めて設置され、感覚過敏の小学生が試合を楽しみました。来年のオリンピックを控え、光や音に配慮した取り組みが日本でも始まろうとしています。