【現場から、】新しい時代に

 
2019年6月21日
完全養殖の夢、「海を知らないウナギ」実用化へ

資源不足で値上がりが続くウナギ。今、完全養殖で生まれた海を知らないウナギの実用化、現実になろうとしています。

報道陣をかき分けて入ってきた台車。普段は静かな役所に集まったカメラが狙うのは、日本の完全養殖の夢を背負った海を知らないウナギです。

日本人が愛してやまないウナギ。しかし、今やニホンウナギは絶滅危惧種に指定されるほど、資源不足の危機を迎えています。今年、国内でとれたニホンウナギの稚魚、シラスウナギの量は過去最低を更新しました。うな重も値上げが続いています。

だから最近は・・・
「ナマズですか?」(客)
「ナマズなんです」(店員)

スーパーには、うなぎ味のナマズが並び、ほかにも鯖や、もはや魚ですらない豚肉のかば焼きまで登場。

「そりゃ安いけど、ウナギはまた違う味がする」

お気持ちはわかります。そんな状況を覆そうと、永遠の夢、ウナギの完全養殖の実用化が今、目前に迫っているのです。

そもそも通常の養殖ウナギは、海から来たシラスウナギをつかまえ、養殖場で大きくなるまで育てます。養殖とはいっても、天然資源に依存しているのです。

「こちらがこの庁舎で育った海を知らないウナギです」(水産研究・教育機構 今泉均 主幹研究員)

完全養殖では、ウナギが産んだ卵を人工的にシラスウナギまで育て、立派なウナギが出来上がります。そのウナギが再び卵を産み、さらにウナギをつくり出す。まさに、“夢の仕組み”なのです。ですが、これまで完全養殖のウナギを口にする日は来ないと思われていました。

「ウナギの生態がわかっていない」(水産研究・教育機構 今泉均 主幹研究員)

手探りで始まった研究でしたが、何をいつ食べさせるといいのか、親ウナギの健康管理方法や適した水槽の形などがようやくわかってきたのです。そして、大注目のうなぎが試食できる段階に来ました。

「身が肉厚でふっくらしています。うなぎの風味もしっかりしていて、おいしいです」(記者)

もはや、普通の養殖と遜色のない完成度です。しかし、問題はコスト面。エサ代や人手がかかるため、今のところ、価格は普通の養殖ウナギの10倍以上高いといいます。見た目も味も、全く見分けがつかないものを生み出せるようになったニホンウナギ。

「着実に基礎的な部分の研究は進んでいるので、いずれ商業化は実現できる」(水産研究・教育機構 今泉均 主幹研究員)

さらなるコストダウンを目指し、研究が進んでいます。