【現場から、】平成の記憶


2019年4月24日
関係「一変させた」 両陛下の国際親善

退位まであと6日。国際親善を大切にされてきた天皇・皇后両陛下ですが、お2人のある行動が国と国との関係を大きく変えたことがあるんです。皇室外交に臨まれる際の陛下の、ある強い思いとは。

36か国。平成に入り、両陛下が訪問された国の数です。積極的な「皇室外交」はどんな効果をもたらしたのでしょう。側近として20か国に同行した佐藤正宏さん(77)は、オランダ訪問が印象的だったと言います。

「真摯にといいますか、誠心誠意込めてなさって、それが通じたという感じですかね」(前侍従次長 佐藤正宏さん)

第二次世界大戦中、日本軍はオランダの植民地だった現インドネシアを占領し、大勢のオランダ人を捕虜にしたり抑留したりしました。激しい反日感情が生まれ、昭和46年の昭和天皇訪問の際には、乗っていた車に瓶が投げつけられました。

平成12年(2000年)、即位後初めて両陛下がオランダを訪問されますが、やはり、抑留された戦争被害者らによるデモが行われました。しかし、この訪問での両陛下の姿が、オランダの人たちの気持ちを大きく変えたというのです。

「そういう人たちの気持ちを、どういうふうにしてあげたらいいか、少しでも和らげたいなという、お気持ちで臨まれた」(前侍従次長 佐藤正宏さん)

まず訪れた戦没者慰霊碑では、およそ1分間もの、長い黙とう。身じろぎ一つされないその姿を、大勢の市民、そして元抑留者が見つめました。

「それまで重い空気だったのが一変して、歓迎色になったと肌で感じました」(前侍従次長 佐藤正宏さん)

その夜、女王主催の晩餐会で…

「今なお戦争の傷を負い続けている人々のあることに深い心の痛みを覚えます」

「深い心の痛み」。陛下は戦争の傷に苦しむ人たちへの思いを、強く示されました。

その後の両陛下の行動が、さらにオランダの人たちの心を動かすことになります。障害者施設では、皇后さまが、小さな女の子をやさしく抱きしめ、運河沿いの通りでは、学生のもとに、お2人で歩み寄って、にこやかに言葉を交わされます。地元メディアは、こうした触れ合いが市民の心を掴んだとして、「両陛下の公式訪問は友好な関係への第一歩だ」などと大きく報じました。

オランダの人たちの気持ちを少しでも和らげたい。そこで、お2人がとった行動とは、穏やかな笑顔で市民の中に入っていかれることだったのです。陛下は、国際親善への思いを、次のように述べられています。

「国際親善の基は人と人との相互理解であり、その上に立って、友好関係が築かれていくものと考えます」

「国際親善の先には、強い平和への思いがあるように私は感じています。幼少の頃に戦争を体験されて、世界平和を築くためには、その基盤である国際親善というのを、しっかりとしていかなければいけないというふうに、お考えになっているのではないでしょうか」(前侍従次長 佐藤正宏さん)