【現場から、】平成の記憶


2019年4月22日
中越地震 ~エコノミークラス症候群の教訓

今回は、新潟県で震度7を観測した中越地震です。余震を恐れて車の中で寝泊まりをしていた人が亡くなるなど、エコノミー症候群の危険性が大きくクローズアップされました。

平成16年(2004年)10月23日。新潟県内では、平成史上最大の被害となった中越地震が発生しました。最大震度7を観測し、68人が死亡。12万棟以上の建物が被害を受けました。

当時、大きな問題となったのは、小学校のグラウンドにずらりと並んだ車の数々、車の中で夜を過ごす「車中泊」です。中越地震は震度5以上の余震が18回を数え、余震の恐怖が住民を襲いました。

「気を使うことがすごく苦痛に思えて、それじゃあ車の中にいようと思う」(被災者)

気兼ねなく過ごせ、一見、安全に思える車中泊ですが、思わぬ危険が潜んでいました。

新潟大学医歯学総合研究科特任教授の榛沢和彦医師です。

「エコノミークラス症候群は正しく言うと、静脈血栓塞栓症と言って、ひどい場合には呼吸困難を起こして死亡することもある病気」(新潟大学医歯学総合研究科 榛沢和彦特任教授)

エコノミークラス症候群。長時間同じ体勢でいることで、足などが圧迫されて血液の流れが悪くなり、血の塊=血栓が作られます。血栓は、肺の静脈を詰まらせてしまうこともあり、最悪の場合、死に至る病気です。

榛沢医師は被災地に入り、エコノミークラス症候群の診断を行って危険性を訴えました。ところが当時、その活動はなかなか理解されなかったそうです。

「初めの頃は僕らだけでやっていて、白い目で見られていたような感じがあった。避難所を運営している人たちとか行政の方は分からない。そういう人たちになかなか理解が得られない」(新潟大学医歯学総合研究科 榛沢和彦特任教授)

中越地震では、4人がエコノミークラス症候群で亡くなりました。榛沢医師は、東日本大震災や熊本地震の被災地にも出向き、エコノミークラス症候群の危険性を訴え続けてきました。さらに、車中泊に限らず、環境が悪ければ避難所でも起こりえることがわかり、避難所の環境を整えるべきと政府に提言を続けました。2016年、内閣府は避難所の運営ガイドラインを改定。段ボール製のベッドを使うなど、避難所の環境を整えることに重点が置かれるようになったのです。

「避難所に関しては、おそらく、近い将来(私が)行かなくてもいいかなと。内閣府の方でも力を入れてくれているので、今後は全部の避難所に全員分ベッドが入ると思う」(新潟大学医歯学総合研究科 榛沢和彦特任教授)

中越地震で大きくクローズアップされたエコノミークラス症候群。新たに迎える令和の時代にも、教訓が受け継がれていきます。