【現場から、】平成の記憶


2019年4月17日
ロス暴動 カメラが捉えた発端

アメリカ史上最悪の暴動事件ともいわれる「ロサンゼルス暴動」です。今もアメリカが抱える「人種間の対立」が火種となった暴動はどのように始まったのか。その様子を克明に撮影した住民を取材しました。

「ざっと見回した限りで20か所以上から黒い煙が上がっています。放火による煙です」(記者、1992年4月)

平成4年(1992年)4月、死者63人、負傷者2300人以上を出した「ロサンゼルス暴動」。27年前、世界有数の都市が無法地帯と化しました。

アメリカ史上最悪ともいわれる暴動の始まりを撮影していた住民がいます。ティモシー・ゴールドマンさん(59)。その日は全米が注目する裁判の評決が下された日でした。

「あの裁判に注目していたし、有罪になると思っていた。証拠のテープがあったから」(ティモシー・ゴールドマンさん)

あの裁判とは、ロサンゼルスの白人警察官ら4人がスピード違反をした黒人男性に、いきすぎた暴行を加えたとして罪に問われたもの。その様子を捉えた映像が残っていましたが、陪審員のほとんどが白人で、下された評決は全員、無罪でした。

「保身のために、うそをついたに決まってる。それがいつものやり方だから。ロサンゼルス警察には、ずっと嫌気がさしていたんだ」(ティモシー・ゴールドマンさん)

無罪評決から2時間後、近所で警察と住民がもめていると聞き、現場に向かいました。

「警察なんて大嫌いだ。俺たちが現場記者だ」(ティモシー・ゴールドマンさん)

「住民と警察官とのトラブルは、こちらの交差点付近で始まりました。近所の住民のほとんどが黒人で、あの日、警察官への無罪評決で、皆、いらだっていたといいます」(記者)

もめごとの発端は近所の少年が警察官に石を投げたこと。警察がまた黒人に暴力を振るうのではないか、弟と一緒にビデオカメラを回し続けました。住民の数はどんどん膨れ上がり、警察が逃げるように現場を離れると、行動はエスカレートしていきます。

「白人というだけで、ひどい暴行を受けていたよ」(ティモシー・ゴールドマンさん)

3時間後には、この状態でした。

「もう目の前の現実を見るのが嫌だった。いろんな感情がめぐったよ」(ティモシー・ゴールドマンさん)

6日間続いた「暴動」で1万人以上が逮捕され、その多くは黒人やヒスパニック。アメリカの「人種間の緊張」が再燃した時代でした。

【あれから27年、いまのアメリカは…】

「もっと悪くなっているよ、トランプの出現でね」(男性)

「今も暴動に暴力、銃撃はあるし、人種差別の状況は全く良くなっていない」(女性)

ゴールドマンさんは…
「状況は変わったと思うかもしれないが、この国には今も人種の分断がある」(ティモシー・ゴールドマンさん)

あの「暴動」から27年。人種間の対立をあおるような手法をとるトランプ大統領が一定層から強い支持を集めています。事態は今、より複雑化しているのかもしれません

「平成の記憶」取材後記

ロサンゼルスの街のあちらこちらから火と煙があがり、商店では強奪が繰り返される。

12歳の時にテレビで見た、あの映像がずっと忘れられませんでした。自分が「人種問題」を初めて明確に認識したのが、あの事件だったと記憶しています。

四半世紀以上が経ち、ロサンゼルス支局に記者として赴任することに。ロサンゼルス暴動について、あらためて取材する機会をずっとうかがっていました。

平成初期に起きたロサンゼルス暴動とは一体何だったのか?平成が終わる今の時代に全く無関係な事件なのか?

暴動の発端を撮影したゴールドマン氏も話していましたが、残念ながら人種問題は今のアメリカでも存在し続けています。しかし、今のアメリカが直面する人種間の問題は肌の色だけでなく、宗教や不法移民の問題などが複雑に絡み合っています。

建国以来、アメリカ社会が抱え続けるこの問題を今後も取材し続け、伝え続けていきたいと思います。

記者:松本年弘

2005年 中部日本放送(CBC)入社
2017年7月からロサンゼルス支局支局長