【現場から、】平成の記憶


2019年4月12日
“政界のドン”金丸氏逮捕 ~1枚の資料が

平成のはじめ、“政界のドン”と呼ばれた金丸信自民党元副総裁。26年前、逮捕されますが、そのキッカケとなったのが、当時、苦境に立たされていた東京地検特捜部が入手した1枚の資料でした。

元東京地検特捜部長の五十嵐紀男弁護士にとって、そこは屈辱の現場でもあります。

「ペンキ投げられたのは、これかね、ここだもんね」(元東京地検特捜部長 五十嵐紀男 弁護士)

27年前(平成4年=1992年)、ここに黄色いペンキが投げつけられました。“政界のドン”金丸信自民党元副総裁への捜査を巡り、当時の特捜部への不満がぶつけられたのです。金丸氏は昭和62年、当時の総理候補・竹下登氏への右翼団体の「ほめ殺し」を止めようと、東京佐川急便の元社長に「暴力団による解決」を依頼。さらに、平成4年には佐川急便から5億円ものヤミ献金を受け取っていたとの疑惑が持ち上がります。すると…

「佐川急便の問題について、私の不徳の点も多々あったと思います」(金丸信 元自民党副総裁)

金丸氏は、ヤミ献金をあっさり認めました。そのため検察は取り調べもせず、当時の政治資金規正法の最高刑、罰金20万円で事件を収束させたのです。

これに世間の不満が噴出。怒りを募らせた男性が検察庁の看板にペンキを投げつけました。

「胸が痛みましたね。検察の権威の失墜の象徴のような形で、(報道に)出ていたからね」(元東京地検特捜部長 五十嵐紀男 弁護士)

そんな中、特捜部長の五十嵐さんのもとに、国税当局から1枚の資料が持ち込まれます。ゼネコンからのヤミ献金で金丸事務所が大量購入した日本債券信用銀行の割引金融債「ワリシン」の記録。金丸氏の不正を示す起死回生の資料でした。

「いい物持ってきてくれたなと震える思い」(元東京地検特捜部長 五十嵐紀男 弁護士)

平成5年(1993年)3月6日、五十嵐さんは勝負をかけます。

「自民党の前副総裁、金丸信容疑者と元秘書の2人を所得税法違反の疑いで逮捕しました」(当時のニュース映像)

金丸氏を逮捕。事務所の捜索で、脱税の証拠、「ワリシン」を押収しようとします。ところが、それがなかなか見つかりません。

「(部下に)事件を潰す気か、見つけるまで帰ってくるなと、ちょっと声荒らげて言いました」(元東京地検特捜部長 五十嵐紀男 弁護士)

秘書から保管場所を聞き出した頃には、すっかり深夜になっていました。事務所から別の部屋に移されていた金庫の中。そこに30億円分を超える「ワリシン」が入っていたのです。

「運び出す画面が映されていましたからね。『良かった』と思いました」(元東京地検特捜部長 五十嵐紀男 弁護士)

いま、日産のゴーン前会長の事件などに取り組む東京地検特捜部。五十嵐さんは、26年前の“政界のドン”の逮捕を振り返って、こう話します。

「証拠とそれを処罰する立派な法律があれば、ちゃんとできるんですよっていうことを示すことができたんじゃないかって、僕は思ってるんですけどね。後輩には頑張ってもらいたいと思っています」(元東京地検特捜部長 五十嵐紀男 弁護士)