【現場から、】平成の記憶


2019年3月15日
児童ら10人死傷 京都亀岡暴走事故

7年前、京都府亀岡市で小学生の集団登校の列に暴走した車が突っ込み、児童ら10人が死傷しました。命の大切さを伝え続ける遺族の取り組みが広がりを見せ始めています。

平成24年(2012年)4月23日の朝、現場は京都府亀岡市でした。

「現場の道路は緩やかな左カーブになっています。ちょうどこの道路の歩道を、集団登校の子どもたちは歩いていました。そして、その子どもたちの背後から車がやって来て、次々とはね飛ばしたのです」(記者)

事故の原因は、無免許の少年(当時18)による居眠り運転でした。妊婦や児童の3人が死亡、7人が重軽傷を負いました。

小谷真緒ちゃん(当時7)。映像は事故の1年前の入学式、初めて通学路を歩いた日でした。

父親の真樹さん(36)は、現場で手を合わせることに抵抗があります。

「(手を合わせると真緒が)ほかに行ってしまったという感覚。常に一緒に生きてるっていう思いでずっといるので」(小谷真樹さん)

真緒ちゃんは三人姉妹の次女。明るい性格で、いつも家族を笑わせてくれる存在でした。食卓には、今でも真緒ちゃんの分のご飯が並びます。

事故後、小谷さんはこの事を風化させたくないと、自らの思いを包み隠さず話す活動を始めました。

「ボロボロになりながら救命とはいえ、体を傷つけられている真緒の姿を見る苦しさの葛藤の末、私は延命治療の停止を医師に告げました。苦しんでいる真緒に、何もできなかった自分がした事は、真緒の死の時間を決めてしまった事でした」(小谷真樹さん)

小谷さんが30回を超えた講演会の中で、必ず話すのは、真緒ちゃんと交わした最後の会話についてです。

「雨降るんやったら、この新しい靴履いていかへんわ。明日から履くわ。いってきまーす。そして真緒は、事件前日に買った新しい靴を一度も履くことができないまま、この世を去りました」(小谷真樹さん)

命の大切さを子どもたちにも語り継ぐため、このエピソードを聞いた大学生が紙芝居にしました。タイトルは、「まおちゃんの新しい靴」です。その紙芝居が先週、真緒ちゃんが通っていた小学校で初めて披露されました。

「しばらくしてお父さんは、まおちゃんの事を色んな人にお話しするようになりました。自分の命も他の人の命も大切にしてほしいという気持ちを、たくさんの人に伝えたくなったからです。まおちゃんも同じ気持ち。お空から『お父さんありがとう』て言いながら、きょうもお父さんに買ってもらった新しい靴を履いて、にっこり笑いながら見ています」

「友達ともっと触れ合いたかったと思うから、かわいそうだと思った」(小学4年生)

「命はなくしたら、もう一度は返ってこないから、命はすごく大切なものなんだと感じました」(小学4年生)

「いろんなその場所にあった(通学路事故防止の)対策がいっぱいあると思ってます。みんな一緒になって、通学路であるなら、子どもたちの命を守っていける対策は取ってほしいですね」(小谷真樹さん)

「平成の記憶」取材後記

事故が発生した際、記者として小谷さんに初めて取材をさせてもらってから約7年、定期的にお会いして話を聞かせてもらう中で出てきたのが、今回の紙芝居の話でした。

当初、小谷さんにとって講演会は「やり場のない怒りをぶつける場」だったそうですが、次第に伝える相手が子どもの事も増え、「命の大切さ」を考えてもらう内容を加えるようになっていったそうです。子どもたちに何かを残したい、伝えたいという小谷さんの思いが、大学生の紙芝居制作につながったのだと思います。

岡山で始まったこの紙芝居が京都、関西、そして全国に広まって小谷さんの思いが届けばと思います。

カメラマン:岩波輝

毎日放送2006年入社
2012年4月事故発生時から取材