【現場から、】平成の記憶


2019年3月1日
愛知・長久手 拳銃立てこもり事件

今回は平成19年に愛知県で起きた拳銃立てこもり事件です。この事件では、特殊部隊の警察官1人が殉職しましたが、現場では何が起きていたのか、当時の捜査幹部が初めて語りました。

それは、警察の歴史に残る汚点と言われた。平成19年5月17日、愛知県長久手町(当時)。男が別れた妻に復縁を迫り、拳銃を持って元妻や娘を人質に住宅に立てこもった。駆けつけた警察官は首を撃たれ、住宅の玄関先に1人取り残された。

警察は、直ちに2つの特殊部隊を投入。刑事部に所属し、立てこもりや誘拐事件を扱う「SIT」。そして、警備部に所属し、ハイジャックなどのテロ事件に対処する「SAT」。普段交わらない2つの部署が揃ったまさに警察の総力戦。しかし、この共同作戦が結果的に事件解決を遅らせる一因ともなった。

当時、現場で作戦の立案などに携わった元愛知県警捜査一課の宇佐美孝一さん(60)は、こう振り返る。

「(SIT〔刑事部〕とSAT〔警備部〕は)一緒に訓練やっていない。(初めて)現場で顔を合わせただけなので。それぞれの任務になっちゃう、連携というよりも」(元愛知県警 捜査一課、宇佐美孝一さん)

発生からおよそ5時間半がたって、ようやく「刑事部のSITが中心、警備部のSATは支援」という枠組みが決まり、救出作戦が動く。

「ゴー!」(指揮官)

部隊が建物の目の前についた、まさに、そのときだった…、男が発砲。その間に警察官は救出され、一命を取り留めた。

しかし、その後ろで体をのけぞらせ倒れるSAT隊員。林一歩警部(当時23)。SAT創設以来、初めての殉職者となった。そして、発生からおよそ29時間後…

「あなた、拳銃は中に置いてきてくれたんだよね」(捜査員)

男が自ら投降。事件は幕を閉じた。

事件解決が長引き、殉職者も出した事件対応について、宇佐美さんは…

「断腸の思いですよ。最大の(私たち)上司の不祥事と感じた。だけど、やらざるを得ない状況。誰かが指揮をしなければいけない」(元愛知県警 捜査一課、宇佐美孝一さん)

あれから12年…、愛知県警本部捜査一課。そこには一枚の旗が…。

「『常山之蛇』という言葉を胸に刻んで対応に当たっている。頭が攻められれば尾が攻め、尾が攻められれば頭が攻め、相互が連携をとって蛇のように粘り強く対応することを心がけている」(愛知県警 捜査一課、鈴木彰 課長)

あの事件以降、愛知県警ではSITとSATが合同訓練も行うようになり、立てこもり事件で1人のけが人も犠牲者も出していない。捜査一課に掲げられたこの旗は、あの事件が残した重い教訓そのものでもあるのだ。