【現場から、】平成の記憶


2019年2月20日
平成最悪の立てこもり ~緊迫の内部映像

今回は人質ら3人が死亡し、40人以上がけがをした平成最悪の立てこもり、名古屋市のビル爆発事件です。JNNは容疑者の説得にあたる警察の緊迫したやりとりを記録した内部映像を独自入手しました。

今から16年前、その事件は起きました。平成15年9月16日、名古屋のオフィスビルで引き起こされた立てこもり爆発事件。午前10時過ぎ、ビルの4階にある運送会社に男が押し入り、大量のガソリンをまいたうえ、支店長ら8人を人質に立てこもりました。男の名は別府昇元容疑者(当時52)。この会社の契約ドライバーでした。

これはJNNが今回入手した事件に対処する警察と消防を記録した映像。男が立てこもった下の3階には前線本部が設置されました。

「ガソリンを今まいている状況。火を点ける、そういう風な状況」

状況の説明をしている捜査員は、当時、愛知県警の捜査一課警部・小西靖之さん。小西さんは犯人との交渉に当たるネゴシエーターとして数々の事件を解決してきた捜査員。ビルの4階、廊下で男に呼びかけます。

「あなたがカチャっと火を点けようもんなら、爆発的に火が点いてしまうの。灯油と違って徐々に火が点くわけじゃないの。あなたが火だるまになっちゃうの」(小西捜査員)

午後1時、要求通り未払いの給料を振り込むと、男は人質を解放。安堵する前線本部、しかし…

「4階にはまだ(人質が)1名いる模様です」

男は支店長の男性1人を残していたのです。小西さんが急いで部屋に向かったその瞬間…

「犯人が立てこもっていた4階部分が突然、大爆発を起こしました」(記者)

この爆発により、立てこもった別府元容疑者と人質の支店長、さらに捜査員1人のあわせて3人が死亡。消防隊員ら41人が重軽傷を負いました。

犯人の説得に当たった小西さんは爆発に巻き込まれ、3日間生死の境をさまよいました。去年、定年退職を迎えた小西さんは今…

「1人残しての人質解放だったので、その時点で(爆破を)心に決めたのかなと。ネゴシエーターは交渉で容疑者を投降させるのが役目。投降させられなかったことが非常に残念。こんな形なら爆発を避けられたのかとか、そう言うことは大変難しい」(元愛知県警捜査一課 小西靖之さん)

事件後、法律が改正され、ポリタンクなどでのガソリンの販売禁止が徹底。警察は、この事件を機に立てこもり事件の専門部隊を創設しました。

あれから16年、現場に事件の跡は残っていません。しかし、あの日、確かにこの場所で平成最悪の立てこもり事件が起きたのです。