【現場から、】平成の記憶


2019年2月7日
えひめ丸事故、課題残されたまま

ハワイ沖でアメリカの潜水艦に衝突され、9人が亡くなった実習船「えひめ丸」の事故。事故後、アメリカ軍の信じがたい実態が明らかになりましたが、抜本的な再発防止策は未だ示されていません。

愛媛県立宇和島水産高校で毎年2月10日に打ち鳴らされる鐘。
失われた命の数と同じ9回鳴らされ、犠牲者の冥福と海の安全を祈ります。

アメリカ太平洋艦隊の司令部が置かれ、軍の艦船が頻繁に行き交うハワイ沖。平成13 年2月、実習船・えひめ丸がアメリカの原子力潜水艦に衝突され、生徒4人を含む9人の命が奪われました。事故は潜水艦が突然、緊急浮上したことが原因でした。

さらに驚きの事実が明らかになります。事故の際、潜水艦には民間人16人が搭乗。緊急浮上は軍の予算に理解を得るためのデモンストレーションとして行われていたのです。

「我々の前で謝罪してください」(家族)

操舵席で民間人が舵を握っていたことやずさんな安全確認などが明らかになりましたが、潜水艦のワドル元艦長に出されたのは、執行猶予付きの減給処分。刑事責任は問われず、名誉除隊となりました。

「きわめて強い不満が残る処分」(愛媛県・加戸守行知事〔当時〕)

家族が求めていたえひめ丸の引き揚げと船内での遺体の捜索は、日本側の世論にアメリカが押される形で実現しました。しかし、緊急浮上訓練の見直しなど、抜本的な再発防止策は示されず、民間人の体験搭乗も継続されています。

「クエスチョンマークはまだ残る」(愛媛県・加戸守行知事〔当時〕)

当時、愛媛県知事としてアメリカとの交渉に臨んだ加戸守行氏は、日米関係の枠組みを意識しながらの対応だったと振り返ります。

「県民感情は激しく燃え上がるだろうと。一方において、日米安保条約というのがあるから、アメリカ頼りで日本が生きているときに支障が起きても困るなということで」(愛媛県・加戸守行知事〔当時〕)

えひめ丸事故の現場海域を望むハワイの慰霊碑。
碑文には「不注意でぶつけられた」という文言が入る予定でしたが、単に「衝突した」という表現に変更され、対米関係への配慮が浮き彫りになりました。

この年(平成14年)、新しい「えひめ丸」が完成。
ハワイ沖での実習が再開されました。

「信用するしかない。アメリカ海軍としても最善を尽くすと言っているので」(遺族)

あの悲劇から2月10日で18年。
若者の未来を奪った事故は、再発防止への課題を次の時代に残すとともに、日米関係のあり方をも問いかけています。