虐待死ゼロに向かって

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2019年5月19日放送

虐待された子どもの権利を守る「アドボカシー制度」とは?

相次ぐ児童虐待事件を防ぐにはどうすればいいのか?
虐待された「子ども本人」の声に向き合う「アドボカシー」と呼ばれる制度について、社会部・梶川里紗記者の取材です。

「命を脅かすくらいの虐待を受けていた身として、自分の心を守るために痛みとか忘れる、痛みを感じないようになろう」(勉強会に参加した男性)

今年1月、都内で開かれた勉強会で過去に親から虐待を受けたりした若者たちが経験を語り合いました。

「私は小5で泣いていることで通報されたってことが母親にばれたときに、泣くなって言われて」 (勉強会に参加した女性)

幼いころの過酷な体験を語るのは、決して簡単なことではありません。
しかし、相次ぐ痛ましい事件を少しでも減らすためにも、当事者本人がもっと声をあげよう。そうした動きがいま少しずつ広がっています。

この勉強会で紹介されたのが、海外で行われている「アドボカシー」と呼ばれる制度です。

「あの人だれ?」
「アドボケイトっていうんだよ」(海外のアドボカシーのCM)

「アドボカシー」とは、自分の意見を言うことが難しい人の代わりに意見を表明し、権利を守ることを意味します。

カナダやイギリスでは、虐待を受けた子どもについて関係機関が集まって協議する場に、子ども本人が参加して意見を言うことができるといいます。 また、幼い子どもでも意思が尊重されるようにするため、「アドボケイト」と呼ばれる代弁する専門の人間がそばに付き添うのです。

「イギリスでも会議の中に子どもがポンっといても『ちょっと何を言っているか、わからない』とか出てくる。アドボケイトが横について事前準備から始めている」 (大分大学福祉健康科学部・栄留里美助教)

イギリスのアドボカシー制度に詳しい大分大学の栄留里美さんは、日本でも子ども本人の意思をくみ取る仕組みが必要だと訴えます。

「意思決定に子どもが参加するということが、日本では全然されていないというのが大きな課題になると思います。本人抜きで決めている今の児童福祉業界に対して、制度を変えていかないといけないと思う」(栄留里美助教)

勉強会に参加した女性は16歳の時、一時保護された施設でも自分の意思を聞き入れてもらえなかったと話しました。

「5~6人の子どもが年齢も関係なく一緒に生活させられていて。壁にも私語厳禁って書いてある」(勉強会に参加した女性)

栄留さんや仲間の研究者たちは、同じ問題意識を持つNPOなどと「子どもアドボカシー全国協議会」を今年7月にも立ち上げるとしています。

「2年後くらいには主要都市ではアドボカシーセンターがあって、アドボケイトさんがいて、というところをまず目指したい」 (熊本学園大学社会福祉学部・堀正嗣教授)

千葉県野田市で小学4年生の栗原心愛さんが亡くなった事件では、心愛さんが父親の暴力を訴えた学校のアンケートの内容は父親に伝えられてしまい、最悪の結果につながりました。

子ども本人の声に寄り添い、向き合う、それは痛ましい事件を防ぐために大切なことだと感じています。

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