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【緊急解説】米中首脳会談が日本に投げかけるもの

【緊急解説】米中首脳会談が日本に投げかけるもの

【緊急解説】米中首脳会談が日本に投げかけるもの
(細川昌彦:中部大学教授・経済産業省元米州課長・Nスタコメンテイター)

●習近平国家主席は米中の対等性を演出した。

●秋の共産党大会以降、中国は強硬路線に転じる

●米中貿易戦争に日本は巻き込まれる

※習近平主席の狙い

 共同声明も出されず、米中双方の発表内容が見事に違う、今回の米中首脳会談。双方の目的、意図の違いがはっきり見て取れて興味深い。中国側発表から読み取れるのは、協調を演出して、大国同士の対等を露骨に誇示すること。今後の体制を決定する、今秋予定の共産党大会を控えて、中国は「政治の季節」を迎えている。今は国内優先、外交休戦だ。自らの国内権力基盤を強固なものとしたい習近平主席がわざわざこのタイミングで訪米での大国としてのふるまいを見せつけたい意図はそこにある。成果は新しい対話の枠組みを合意したことぐらいで十分だ。米国との具体的取引は先送りにして、米国の圧力をかわすことに主眼がある。「対話の枠組み」はこういう時の常套手段で、2月の日米首脳会談での経済対話の合意を意識している。また、米国に「相互尊重」を認めさせたことは、この概念が核心的利益の尊重を含みうる概念だけに、米国の圧力に弱腰ではなかったことを国内向けにアピールできる。

※体制整わぬトランプ政権

 他方、米国はどうであろうか。トランプ政権にとって国内政策の失点を外交で稼ぐ、いいチャンスであった。波風立てたくない中国相手に、米国は強硬姿勢が国内的には支持されるというのは明らかに交渉ポジションが強い。問題は政権内部だ。幹部人事が進んでいない結果、体制が整わず、対中スタンスも定まらない。政権内の力学も流動的だ。結果的に具体策にまで詰められず、立ち入れない。具体策に立ち入らない中国。他方で立ち入れない米国。具体策は先送りになるのは当然の結果だ。

※中国が背負う宿題

 そういう中で、協調の演出と引き換えに中国が重い宿題を負わされた問題が2点ある。第1が、貿易不均衡是正の100日計画の策定だ。米国側は誇らしげに発表した一方、中国側の発表には一切出てこないのは、米国が中国にねじ込んだ証左だ。中国としてみれば、今秋までは米国と事を構えず、なだめる作戦だろう。なだめる手法は80年代の日本を参考にしている。当時、米国から貿易不均衡是正の圧力を受けて繰り出したのが、輸出自主規制、輸入拡大、現地生産の拡大の3点セットだ。米国としても今秋までの交渉ポジションの強いうちに、取れるものは取っておこうという算段だ。中国は経済のパイが大きいこと、そして国有企業もあって、経済活動を国家がコントロールすることはお手の物であることを考えると、当時の日本と比較にならないぐらいやりやすいだろう。

※米中貿易戦争、日本はどう備える?

 むしろ日本への影響が問題だ。近々予定されている日米経済対話で日本にも要求してくる可能性が出てきた。かつて指摘したように、米国が「均衡のとれた経済関係」という、いわば結果主義を標榜していること自体問題だが、中国は受け身の貿易交渉に不慣れなせいか、あっさりこれを認めてしまった。日本は二国間の貿易不均衡を是正しようとすること自体の問題を指摘すべきだろう。また、このような対応に効果がないことは過去の経験が実証している。日本は中国と同じような対応をするわけにはいかず、難しい対応を迫られそうだ。今秋の党大会を終えた以降がポイントだ。中国は対外的に強硬路線になって、米中の貿易戦争が激化することが予想される。米国は80年代のような一方的措置をちらつかせているが、中国は当時の日本相手とはまるで事情が違う。中国は巨大な中国市場をいうレバレッジを持っており、米国への報復措置も有効に繰り出すことができる。従って、結果的に米国が取り得る有効な手段は鉄鋼などでアンチダンピングを頻繁に活用することぐらいかもしれない。いずれにしても、日本が米中の貿易戦争が激化すれば、サプライチェーンなど企業活動に影響は避けられず、巻き込まれるリスクが大きい。日本としては、米国が中国、日本を同列に並べて攻める構図ではなく、日本と米国が連携して中国問題に対処していく構図に持ち込めるかどうかが日米経済対話のポイントだ。また、実利優先のトランプ政権がいつ、どのように中国と取引するかも要注意だ。場合によっては米中FTAもあり得ると思って、日本は対応を考えておくべきだろう。

※対北朝鮮も要因に

 もう一つの問題が北朝鮮問題だ。まず米中の間で時間軸が違う。米国は米国本土を射程に入れるICBMの開発が迫り、事態は緊迫している。他方、中国は今秋の共産党大会まではなかなか思い切った手を打てない。この時期、人民解放軍に不満を持たせないことは権力基盤の上で大事だ。また、来月予定の韓国大統領選も大きく影響する。反米、対北融和の大統領が選出される可能性もある。中国としては米国を揺さぶるうえでも、そういう事態をじっくり待ちたい。逆に米国はそうならないうちにと、中国を具体的行動に追い込んでいる。そういう中で日本はどうすべきか。短期的には、米国の「あらゆるオプション」への備えに怠りないようにすべきだろう。ミサイル防衛の強化に一刻の猶予も許されない。北朝鮮は日本射程の弾道ミサイルを100発近く保有しているという現実を直視して、平和ボケから脱するべきだ。また、中長期的には、朝鮮半島の将来像をどう描くかという、本質的な問題に米中は向き合うことになるだろう。朝鮮半島統一して非核化、中立化する考えが出てきてもおかしくない。その時、深刻な影響を受けるのが日本である。米中のグランドデザインが共有されたとき、想定外で思考停止ということにならないようにしたいものだ。経済問題も北朝鮮問題も、日本は固定観念に囚われず、柔軟な思考が必要となる。

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