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TBS NEWS

2022年1月14日

今週の注目「バイデン政権1年」

[ TBSテレビ報道局 上席解説委員 播摩卓士 ]

アメリカのバイデン政権が20日で誕生から1年を迎えます。世論調査によれば、バイデン政権の支持率は41.8%(real clear politic,12/17-1/12)で、不支持が53.8%と大きく上回り、支持低下に歯止めがかかっていません。政権発足後1年の時点で支持率が50%を切ることは珍しく、ギャロップによればトランプ前大統領に次ぐ低い支持率です。当初50%台前半だった支持率が不支持と逆転したのは、去年8月のことで、突然のアフガニスタンからの惨めなまでの撤退劇が大きく影響したことは間違いありません。支持率低下の要因は、党派対立や民主党内不協和など、むしろ国内に多々あり、それらが支持率低下と相まって、バイデン政権の政治基盤をさらに脆弱化させているのが現状です。政権基盤の揺らぎが、外交にまで手が回らないという状況を生み、その隙を中国やロシアが試しに来るという懸念が増大しているというのが、今の、危険な実態でしょう。

外交面で言えば、バイデン政権はトランプ前政権時代の「アメリカ第一主義」から、再び「同盟重視、協調路線」に転換することを目指しました。アジア太平洋地域では、「自由で開かれたインド太平洋」重視を鮮明にして「QUAD」という4か国の枠組みを制度化し、「AUKUS」という米英豪の“軍事同盟化”にも踏み込みました。対中国ではトランプ大統領の「思いつきの劇場型交渉」から、「中国との競争に勝つ」という目標を明確化、先端技術や経済安全保障、人権重視の観点から、締め付け強化を鮮明にし、締め付けのいわば「線引き」を実務的に積み上げており、いずれも評価されて然るべきです。

その一方で、政権発足から1年も経つのに、バイデン政権ならではの新しい枠組みや構想が出てこないことに物足りなさを感じるのは私だけでしょうか。包括的な対中国戦略は未だにまとまっておらず、通商政策でも、TPPには戻らないというだけでそれに代わる構想は語られません。去年秋に来日した閣僚からは「新たな枠組みを検討」といった発言があったものの、その中身が詰められている様子が全くないだけに、逆に空疎な印象すら与えます。対ロシアも、対イランも、対北朝鮮も、何かを前に進めるようなアイデアは未だ見えません。アメリカでは新しい政権ができれば、周辺のシンクタンクも含めて、政権実現に尽くした人々による新しいアイデアが政策としてぶち上げられ、いくつかの花が開いていくというのが通例です。それが、今回はないのです。

バイデン政権の顔ぶれがオバマ時代からの旧世代中心で、新しい人が入らなかったからなのか、直面する問題があまりにも難しいからなのか、その理由は色々でしょうが、政権の政策形成能力が低下しているのではと危惧します。思えば、バイデン政権は、「トランプを止める」ことを最大の命題として成立した政権です。だとすれば、少なくとも「元に戻す」だけで、その歴史的な意義はあったということになるのかもしれません。だとすれば、この次の政権は何をなすべきなのか。わずか1年にもかかわらず、そうしたことが頭をよぎるほど、バイデン政権は今、厳しい状況に置かれているように思えます。

播摩卓士

播摩卓士(TBSテレビ報道局 上席解説委員)

1984年入社 報道局で経済全般、日米関係、国際政治などを取材。ワシントン支局長、NEWS23キャスター、編集主幹、解説室長などを経て、現在、BS-TBS「Bizスクエア(土曜午前11時)」キャスター。