NEWSの深層

TBS NEWS

2021年11月12日

今週の注目「インフレ加速へ、衝撃の数字続々」

[ TBSテレビ報道局 上席解説委員 播摩卓士 ]

コロナの影響による供給制約や原油などエネルギー価格高騰で強まる世界的なインフレ懸念ですが、数十年ぶりという衝撃の数字が相次いで公表されました。

まずは30年ぶりというアメリカの消費者物価指数。10月は前年同月比で6.2%の上昇を記録し、9月の5.4%から勢いがさらに加速、6%台の上昇は1990年以来のことです。確かに中古車価格の26%上昇など一時的な急騰と見られる項目はあるものの、食品の5%上昇を筆頭に、物価上昇は全般的な拡がりを見せています。

中央銀行であるFRBのパウエル議長は、先般、物価の上昇を、「一時的要因」から「一時的と期待される要因」によるもの、と微妙に表現を修正し、目標とする2%上昇に落ち着く目途を来年夏頃に後ずれさせましたが、こうした『呪文』に懐疑的な人が増えてきており、市場金利は2年物を筆頭に騰勢を強めています。利上げが早まるかもしれません。

一方、デフレの国ニッポンでも40年ぶりという数字が出ました。かつての卸売物価にあたる国内企業物価指数は、10月が前年同月比でなんと8.0%も上昇、第2次石油ショックの余韻が残る1981年以来の上昇率でした。中でも輸入品の取引価格を示す輸入物価指数は前年比で38.0%の上昇と信じられないような高い数字です。

これは原油高に加え円安がダブルパンチとして効いているからで、資源や食料の多くを輸入に頼る日本にとっては大変なことです。ガソリン価格からパンやパスタ、ポテトチップス、さらに文房具に至るまで身近な商品の値上げのニュースは毎日のように報じられています。

もっとも9月の消費者物価は前年同月比で0.1%上昇とようやくプラスに頭を出しただけで、消費者物価全体への波及はまだ限定的です。日本では消費者のデフレマインドが強く、販売価格を値上げすると売り上げ減少に直結するので、なかなか企業が値上げに踏み切れないのが実情でしょう。価格は変えずに内容量を減らす『ステルス値上げ』が横行する理由もそこにあります。

コストの上昇を商品価格に転嫁できなければ、企業がそれを吸収することになるわけで、それは企業収益の圧迫を通じて、ようやく回復の兆しが見えてきた景気の下押し圧力となります。一方、価格転嫁が実現すれば消費者物価は急騰し、いまだ雇用や所得が上向かない庶民の生活を直撃することになりかねません。

需要が強くコストを価格に転嫁しやすく、現に賃金も上がっているアメリカに比べて、日本のインフレ懸念ははるかに厄介なことです。

播摩卓士

播摩卓士(TBSテレビ報道局 上席解説委員)

1984年入社 報道局で経済全般、日米関係、国際政治などを取材。ワシントン支局長、NEWS23キャスター、編集主幹、解説室長などを経て、現在、BS-TBS「Bizスクエア(土曜午前11時)」キャスター。