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TBS NEWS

2021年9月20日

今週の注目「中国TPP加盟申請の衝撃」

[ TBSテレビ報道局 上席解説委員 播摩卓士 ]

まさか本気で申請するとは―

中国が9月16日、日本など11か国が参加するTPP=環太平洋連携協定への加盟を正式に申請しました。習近平国家主席が「TPPへの加盟を積極的に検討する」と表明して以来、わずか1年足らずで正式申請に踏み切りました。そもそもTPPはアメリカが中心となってアジア太平洋地域に高いレベルの自由な貿易・投資圏を作ろうというもので、急速に台頭する中国に対し、ルール作りという観点で対峙する狙いがありました。ところがアメリカはトランプ政権の下でTPPから離脱、日本など残された11か国が発足させたものです。そこに中国が自分から入りたいと言うのですから、くせ球と言う他ありません。

TPPは自由化や透明性のレベルが高く、国営企業への補助金や知的所有権保護、政府調達、さらにはデジタルデータのルールや労働者の人権問題などで、中国がTPPの求める基準に達することは難しいとの見方が大勢です。その上、TPP加盟には、加盟国全ての承認が必要なため、激しい貿易摩擦を抱えるオーストラリアはじめ、安全保障上の問題を抱える日本などの国々が容易に賛成しないと見られます。さらに次の加盟国には先に申請した英国が予定されており、英国が加盟すれば、益々中国の申請は難しくなるでしょう。

そんなことは百も承知で中国が加盟申請したのは、加盟国間の足並みの乱れを誘発したいからに他なりません。加盟国の中には中国により親近感があり、貿易ウエイトが高い国々もありますし、中国も含めた大きなアジア太平洋の自由貿易圏をという掛け声には正面切って反対しにくい側面もあるでしょう。中国はアメリカが孤立主義を深める中で、自らは国際的な枠組み参加に積極的だとアピールできるわけで、損はありません。

また、新たにTPPに加盟しようと検討している国、例えば、タイや韓国を「中国離れ」からけん制する狙いもあります。とりわけ台湾は安全保障上の理由からTPP加盟に前向きで、中国にしてみれば、自ら先に加入申請をするだけでも、「台湾は中国の一部なのだから」と台湾の加盟申請を妨害できるわけです。中国にとっては、計算し尽くされた加盟申請なのでしょう。

アジア太平洋諸国にとって、対中包囲網に加わるのか、それとも中国に友好的なのか。ことあるごとにその踏み絵を迫られることは、実に重荷です。

では、日本はどうするべきか。「TPPが求める基準を満たし、自由で開かれた貿易投資体制を目指す国はウエルカムですが、残念ながら、基準を満たさない国は入れません」と原則に則った対応をすればよいのです。揺さぶりに、ブレてはいけません。ほかの10か国は日本の対応をじっと見ています。

播摩卓士

播摩卓士(TBSテレビ報道局 上席解説委員)

1984年入社 報道局で経済全般、日米関係、国際政治などを取材。ワシントン支局長、NEWS23キャスター、編集主幹、解説室長などを経て、現在、BS-TBS「Bizスクエア(日曜午後9時)」キャスター。