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TBS NEWS

2020年10月26日

今週の注目「三菱スペースジェット、凍結の方向」

[ TBS報道局 解説・専門記者室長 播摩卓士 ]

 国産初のジェット機開発プロジェクトが凍結される方向です。

 関係者によりますと、三菱重工業は国産初のジェット旅客機「スペースジェット」=旧MRJの開発・製造について、新規の顧客開拓や量産の準備をせず、事実上凍結する方向で調整しているということです。開発が遅れていたところに、新型コロナの感染拡大で世界的に航空機の需要が低迷しているためで、今後、今年度に半減させた開発費を更に大幅に削減するとみられます。

 三菱重工業は、2008年に旧MRJの開発を決定し、これまでに1兆円もの開発費をつぎ込んできましたが、当初2013年を予定していた納入時期は、開発の遅れから6度にわたって延期されていました。今後は、環境が好転すれば事業再開をめざすとしており商業飛行に必要な認証の取得に向けた作業は続けていく方針です。

 国産旅客機の開発は、プロペラ機のYS-11以来、半世紀ぶりということで、大きな期待を集め、プロジェクトは、新たな産業育成に向けて官民一体で進められていました。航空機産業は裾野が広く、電動化に伴って自動車の部品産業に大きな影響が予想さる中、ひときわ期待が強かったのですが、その実現は大きく遠のいた形で、関係者の失望は小さくありません。コロナの影響といえばそれまでですが、当初の納入予定が8年も遅れれば事業環境が変わっても仕方ありません。これまで膨大な開発費を注ぎ込み、多額の損失も計上してきており、三菱重工も今年3月期決算では20年ぶりの赤字に転落するなど、これ以上、このプロジェクトを支える余力がなくなってきていました。

 旅客機を一から開発・製造することは、これまでやっていたようなアメリカ企業から一部分を受託生産するのとは違って、難しい作業であることは素人ながらも十分理解できるところです。それでも「ものづくり王国」とされる日本で、しかも10年以上にわたって国家プロジェクトとされながら、結局うまく行かなかったという事実には、やはり愕然とさせられます。「ニッポンの力は、ここまで落ちてしまったのか」とがっかりする方もいるかもしれません。

 まさに残念な出来事ですが、何とか将来につなげて欲しいものです。

(BS-TBS「Bizスクエア」 10月25日放送)
播摩卓士

播摩卓士(TBS報道局 解説・専門記者室長)

1984年入社 報道局で経済全般、日米関係、国際政治などを取材。夕方のニュース番組やNEWS23編集長、経済部長、ワシントン支局長、NEWS23キャスターなどを経て、現在、BS-TBS「Bizスクエア(日曜午後9時)」キャスター。