2020年5月15日
[ TBS科学担当解説委員 齋藤泉 ]
新型コロナで長引く臨時休校について、小学校の教育現場はどう受け止めているのか?
杉並区の和田小学校などで校長を務め、現在はNPO「みんなのコード」の主任講師として子どもたちにプログラミングの楽しさを伝える活動をしている福田晴一(ふくだはるかず)さんに現状と今後について聞いた。
福田さんによれば、コミュニケーションは、ホームページでの情報発信、例えば文科省の推奨サイトを示したり、それぞれの学校の課題を提示したり。あとは電話での健康等の確認するしかないのが実情。このほか、ネットを通じて担任とやりとりができる地域もあれば、担任がまとめて宿題宅急便のように膨大なブリントを郵送したり、自分で届けたりするなどして電話で各家庭に連絡している学校もある。
児童生徒のことを思えば、決して、今の取り組みがよいとは思ってはいないが、学校側も無い袖は触れない中で、精一杯、取り組んでいるという。
休校当初は、保護者も理解を示していたが、事態が長引いてくると「オンライン授業ができないのか?」というクレームが出ているという。私立学校ではオンラインを始めたところが多く、一部の自治体ではオンライン授業を開始した。公立学校で格差が生じるのは何故か?
福田さんは「格差は今始まったことではない。パソコンなどの環境整備の格差は、現場にいる者は皆感じているが、なかなか改善されていない」と指摘する。政府は教育の情報化ということで予算を組み、「GIGAスクール構想」として3年間で小中学生に1人1台の端末を配備するロードマップも示した。しかし、そのための予算は、地方自体に交付金として配分されるため、熱中症対策の空調設備や地震対策のための建物の耐震化などに充てられるなど、必ずしもICT化に使われていないのが現状だという。
一方で、自治体の首長や教育長の考えで、着実にオンライン化を進めているところもある。「今回の事態でオンライン化の必要性が認識され、格差是正につながれば」と福田さんは前向きに考える。
不登校傾向の児童生徒は「オンラインでもいいんだ」と遠隔授業の方が自分には合うと目覚めた子供もいるのではないか。
福田さんは「先生にとっても同じで、休校中によるオンラインの取り組みが、コロナ後の学校教育のあり方を変えると思う。今後はハイブリッドな教育システムになることを願っている」と述べる。「学習指導要領では“予測不可能な時代に、自ら課題をみつけ、自ら課題解決に取り組む、社会を拓いていく児童生徒“と謳われている。その姿が実現するのではないか」。まさに「ピンチをチャンスに」のプラス思考だ。
齋藤泉(TBS科学担当解説委員)
経産省、文科省、外務省など10の省庁を担当。先端技術、ロボット、次世代エネルギー、情報通信など取材。東日本大震災後は福島第一原発の廃炉の現場取材を継続。趣味はジャズと映画鑑賞。合気道二段。