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TBS NEWS

2019年10月7日

コラム「トランプ大統領、中国にバイデン親子捜査求める」

[ TBS報道局編集主幹 播摩卓士 ]

 「中国はバイデン親子に関する捜査を始めるべきだ。中国で起きたことはウクライナ同様、たちが悪い」

 アメリカのトランプ大統領の3日の発言が波紋を広げています。民主党の大統領候補選びでトップを走るバイデン元副大統領とその次男で国際コンサルタントのハンター氏に対する捜査を、なんと貿易問題などで激しく対立する中国の習近平主席に呼びかけたのです。バイデン氏親子への捜査に関しては、トランプ大統領がウクライナ政府に対して、支援と引き換えに捜査を進めるよう政治的圧力をかけた疑惑がすでに明らかになっており、アメリカ議会で弾劾調査を求める動きが進んでいます。そのさなかの発言でした。

 トランプ氏の狙いは明確です。ウクライナ疑惑では内部告発などもあって旗色が悪くなりつつあり、バイデン氏親子の新たな疑惑を、しかも中国との癒着という視点でぶち上げることで弾劾という矛先をかわし、大統領選の対立候補にさらにダメージを与えることです。父親が副大統領時代にハンター氏が役員を務める投資ファンドが中国で認可され、その後、中国政府系企業からの投資資金も受けながら、中国企業に投資して多額の利益を上げていたと聞けば、普通のアメリカ国民は「問題がなかったわけじゃないだろう」と受け止めるだろうという読みがあります。

 一方で、前回の大統領選挙でロシアからの介入を招いたと批判されてきたトランプ大統領が今回も外国の介入を自ら誘発している、しかも、ウクライナだけでなく、「あの、中国にまでも!」となれば、さすがに共和党支持者からも批判の声があがるかもしれません。その意味で、今回のトランプ発言は大きな賭けであり、それだけトランプ大統領が内政上、苦しい立場に追い込まれている証拠です。

 もっともバイデン氏にとって、この話題が好ましくないことも明白です。政治家として将来を嘱望されていた長男の故ボー・バイデン氏と違って、次男のハンター氏は何かと問題が指摘される人物です。ボー氏が4年前に病気で亡くなった際のバイデン氏の悲しみはあまりに深く、そのことが前回、大統領選挙への出馬をあきらめた大きな要因でした。その悲しみからようやく立ち直った今回の挑戦に、今度は次男をめぐる疑惑が政敵に使われるという構図になっています。

 民主党候補で支持率トップを走ってきたバイデン氏ですが、ここにきて左派で女性のエリザベス・ウォーレン氏に肉薄されています。しかも、同じ左派のサンダース候補が心臓病の手術で選挙運動の中止を余儀なくされており、その支持票がウォーレン氏に流れる可能性があります。その意味ではバイデン氏にとっても正念場です。大統領選挙まで1年1か月、今後を左右する出来事となっています。

(BS-TBS「Bizスクエア」 10月6日放送)
播摩卓士

播摩卓士(TBS報道局編集主幹)

1984年入社 報道局で経済全般、日米関係、国際政治などを取材。夕方のニュース番組やNEWS23編集長、経済部長、ワシントン支局長、NEWS23キャスターなどを経て、現在、BS-TBS「Bizスクエア(日曜午後9時)」キャスター。