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TBS NEWS

2019年5月25日

ベネズエラ クーデター未遂の裏側で ~繰り広げられた情報戦~【2】

[ 萩原豊 TBSニューヨーク支局長 ]

■双方が大規模デモも…マドゥロ大統領支持の根強さ

 夜が明けた。まだ静かな朝だった。ホテルから見える高速道路は、反政権側に勢いがあれば、人の波で埋まると予想されていた。ちなみに、意外にも良く整備された高速道路は、日本が、かつてモデルの一つにしたという歴史もあるという。

 屋上から、「NEWS23」での中継レポートを終えた後、グアイド氏側のデモ・集会に向かった。それなりに人数は集まっているものの、「史上最大」にはほど遠かった。

 それでも、支持者たちに、なぜグアイドを支持するのか聞くと、皆、熱く訴えた。

 「経済はチャベスの時代から40年間止まり続けている。マドゥロは、チャベスの政策をそのまま引き継いだから、一層最悪です」(男性)

 「汚職には疲れました。まだわからない汚職の問題がたくさんあります。私たちはその汚職を全部なくしていきたいんです」(女性)

 かつて、カイロのタハリール広場に集まった100万人の群衆。2010年、「アラブの春」の初期段階である。今こそ、国を変えようという若者たちの熱気と眼差し。その中で取材していた私は、人の波に押しつぶされそうになった経験がある。そこまで激しい、〝うねり〟のようなものをグアイド氏支持者からは感じることはできなかった。

 一方のマドゥロ大統領側の集会は、すでに勝利を祝うかのような空気だった。

 赤道に近いベネズエラの日差しは強い。集まった数万人の支持者を前に、爆音とも言える大音量で、ミュージシャンが歌い、踊る。音楽の合間に、政権幹部による、怒鳴り声のような演説が入る。そして、再び、歌が続くなか、支持者は、マドゥロ大統領の登場を待つ。午後3時半頃とも言われていた登場は、30度近い気温のなか、待ちに待った後、午後5時になっていた。

 大男だった。音楽が鳴り響くなか、小柄の妻の手を握り、2人で姿を現したが、すぐに話し始めない。これも演出なのか、数分してから、ようやく、マイクの前に立つ。

 「クーデターを試みた連中は、私が屈服し、投降し、国外に逃げると思った」

 「このクーデターは、アメリカのホワイトハウスが直接指揮したものだ」

 50分近くに及んだ演説は、クーデター批判とともに、トランプ、ボルトン両氏の固有名詞を挙げた、強烈なアメリカ批判が大部分を占めた。

 軍のクーデター呼びかけ失敗、「史上最大」デモの不発で、短期的な勝負は決まった。

ベネズエラ クーデター未遂の裏側で ~繰り広げられた情報戦~【3】⇒
■ “マドゥロ支持”背景に何が?
■ 今後はどうなる?米中対立の影響も

萩原豊

萩原豊(TBSニューヨーク支局長)

社会部、「報道特集」「筑紫哲也NEWS23」、ロンドン支局長、「NEWS23クロス」、社会部デスク、「NEWS23」番組プロデューサー・編集長、外信部デスクなどを経て現職。40か国以上を取材。