NEWSの深層

TBS NEWS

2019年5月6日

今週の数字「3.6%」

[ TBS報道局編集主幹 播摩卓士 ]

 アメリカ労働省が3日発表した4月の雇用統計によりますと、今年4月のアメリカの失業率は3.6%と前月より0.2ポイント下がって、なんと49年4か月ぶりの低い水準になりました。49年4か月前というと1969年12月。アポロ11号が月面に着陸した年で、オイルショックも日本の台頭もまだずっと先というパックスアメリカーナの最終局面です。雇用動向をより敏感に反映する非農業部門の就業者数も4月は市場予測を大きく上回る26万3000人も増加しました。安定成長期には10万人を超えれば上出来といわれるだけに、アメリカの雇用情勢はまさに「歴史的に」好調と言って良いでしょう。

 先週、このコラムでお伝えしたアメリカの1-3月期の実質GDPも3.2%成長に達しており、昨年末の先行き不安はどこへやら、振り返れば「こんなに絶好調なのにどうして中央銀行のFRBは利上げを停止したのだろうか」と思うほどです。

 それでもトランプ政権や市場はむしろ『利下げ』を求め、FRBのパウエル議長が1日の記者会見で利下げの可能性を一蹴すると、ダウ平均株価は急落する場面すらありました。市場が利下げを期待するのは、成長や雇用が良くても物価が上がらないからです。FRBが指標として使う個人消費支出(PCE)物価指数は、食品とエネルギーを除いたコアで3月は1.6%の上昇にとどまっていて5か月連続で目標の2%を下回っているのです。

 景気がこれほど良いのになぜ物価が上がらないのか、これこそが「現代経済」の最大の謎です。「インフレになっていないのだから利上げの必要はない」「むしろ物価がこれ以上下がっては困るから利下げすべきだ」というのが利下げ派の主張です。

 その先あるのは「日本化」。つまりいったんデフレになってしまえばいかに金融政策を動かそうが脱出できない、という恐怖です。アメリカでもヨーロッパでも、今やこの「日本化」を避けることが経済運営のキーワードになりつつあります。

 お祝いムードに沸いた10連休でしたが、「令和の日本経済」は、これほどまでに重い課題を背負ってスタートしているのです。

(BS-TBS「Bizスクエア」 5月5日放送)
播摩卓士

播摩卓士(TBS報道局編集主幹)

1984年入社 報道局で経済全般、日米関係、国際政治などを取材。夕方のニュース番組やNEWS23編集長、経済部長、ワシントン支局長、NEWS23キャスターなどを経て、現在、BS-TBS「Bizスクエア(日曜午後9時)」キャスター。