NEWSの深層

TBS NEWS

2019年3月12日

「赤じゅうたんの掃除」の裏側 ~怒れる福山哲郎参院議員

[ TBS政治担当解説委員 石塚博久 ]

 「泊り番」を終えて、明けの朝だ。国会へと続く坂を上っていくと左手に衆議院第一議員会館、右手に首相官邸とそれを取り囲む竹林だ。青竹のようにすくすくと伸びていくよう思いを込めたわね、とかつて青木幹雄官房長官が語っていたのを思い出したりした。正面からは、朝日がのぼり新しい年度を迎えるにはふさわしい朝だった。

 国会の朝は掃除で始まる。赤じゅうたんの廊下には、くねくねと長い「掃除」のホースが伸びる。それを、担当の職員が上手に扱い、前の日に積もったじゅうたんのホコリをとっていく。

 この、毛足の長い赤じゅうたんは、人の踏み重ねる方向によって出入口あたりには「模様」ができ、その様子から「雲」とよばれる。そんな、絨毯の「掃除」には、大理石の壁の下のあちらこちらにある「吸引口」にホースをつなげることで、即席の「掃除機」が縦横無尽に国会の隅々まで「吸引」していけるというわけだ。

 今日は、参議院予算委員会の日なので、閣議後の記者会見は首相官邸のエントランスホールと、ここ参議院食堂でひらかれることになる。足を運ぶと、なんとも人だかりができて、熱気に包まれていた。

 とりわけ、人だかりの目立つのは麻生財務大臣の会見のところで、消費税増税対策の「ポイント還元制度」について尋ねられた麻生大臣が「駆け込み需要とか、反動減というような景気経済消費に影響を与えるということをなるべく平準化させるということを目的にこの制度を実施する」などと胸を張って話していた。「還元できる体力がある大企業に対して、中小企業がそういったものに対応できるということを考えて、同時によく言われているキャッシュレスというものを促進していくことを目的としている」などと滔々と語り、周囲の記者も熱心にメモを取るのだが、「消費税対策」と「キャッシュレス促進」というものを組み合わせてるのがいかにも役人の考えそうな「机上論」で「大丈夫かいな」と思ったりした。

 そのわきでは、石田総務大臣の人だかりで、そこからは「本日の閣議で電気通信事業法の一部を改正する法律案と放送法の一部を改正する法律案を閣議決定した」「NHKのインターネット活用業務を拡大し、常時同時配信を可能とするとともに・・・」などと、漏れ聞こえてきた。「大変なことになってきたわい」と思ったりした。

 そして、雪崩を打ったように大臣らは委員会室に移り、予算委員会の審議が始まった。今日は、予算案審議が参議院に移り、2日目。福山幹事長や、蓮舫副代表ら立憲民主党の論客が質問に立つのだ。

 沖縄県の普天間基地の名護移転に関する反対が圧倒した県民投票の直後だけに、立憲民主党の福山哲郎幹事長が、受け止めを質したのに対し、安倍総理が「今回の県民投票の結果を真摯に受けとめ、これからも政府として基地負担の軽減に全力で取り組んでまいります」などと、通り一遍の答えとなったために野党席はざわざわとしだした。そして、県民投票後も、埋め立ての土砂投入が続けられたことを誰が決めたのかと質され、岩屋防衛大臣が「私でございます」と答えたのだが、それを安倍総理と相談したかとの問いに「かねてよりですね、事業は継続さしていただきたいというふうに決めておりました」などと答えるから委員会室が朝っぱらあれるまいことか。野党からは「県民の声なんかどうでもいいということだよ」「ひどいよー」「なにが真摯に受け止めるだよー」などと叫び声が上がった。

 そして、委員長席に理事が集まってのやり合いが始まった。しばらくして、質疑が始まるのだが、安倍総理が「私たちはですね、危険な状態にある普天間の全面返還を一日も早く実現しなければいけない、もはや先送りはできないということであります」と言うと、今度はそれまでのやり取りで興奮した自民党議員から、「最低でも県外と言うから混乱したんだろー」と、鳩山内閣を非難する声があがり、「うるさい」との応酬で騒然となった。その後も、野党からは「真摯に受け止めるって言ったんだろ。お前何なんだよ」などと感情的な野次が飛び、何度も審議は止まった。

 そして、福山氏は、埋め立て用地に軟弱地盤があったことを指摘し、「地盤改良だけで4年」かかるとし、「これで本当に工事できるんですか。それこそ普天間の固定化なんじゃないですか。それこそ普天間の固定化が長く続くんじゃないんですか。負担軽減じゃなく負担増なんじゃないですか。総理いかがですか」と畳みかけた。

 これには安倍総理は色をなして「負担増というのは。負担増というのは大きなこれは誤解を与えていると思いますよ。まさにですね安倍政権になって様々な返還がなされたんです。先ほど申し上げましたよね」と言うと「やってないとこ、もとに戻しただけだろっ」と野次が飛んだ。これに「今後ろから野次でですね、使ってないところ戻してもらっただけだっていう野次が飛びましたが、じゃ、じゃあできたんですかそれが」とさらにヒートアップ。どこからか「野次にこたえるなあ」と声があがった。安倍総理は「我々が政権奪還する前に、全くできてないじゃないですか。西普天間の住宅地の返還というのもできました」。騒然とする中。委員長が「ご静粛にっ」と声をあげた。これから1か月にわたる参院での予算案審議が始まることに思いをはせ「やれやれ」と思った。

石塚博久

石塚博久(TBS政治担当解説委員)

1986年、日本経済新聞社入社。大阪本社証券部、名古屋支社(愛知県警、名古屋市役所担当)を経て、90年から東京本社政治部。官邸クラブ(海部政権)、野党クラブ(社会党土井委員長、田辺委員長)、平河クラブ(自民党竹下派担当、92年竹下派分裂など)等を担当。
1996年TBS入社。政治部で新進党クラブ、平河クラブ(自民党橋本派担当)、外務省(田中真紀子外務大臣)等を担当。その後「筑紫哲也NEWS23」ディレクター、デスクを経て、「時事放談」を制作プロデューサーとして立ち上げ。現在、TBS報道局政治担当解説委員。
著作:「官僚」(共著)新聞協会賞受賞